好酸球性肺炎(こうさんきゅうせいはいえん)について
好酸球性肺炎は、アレルギー反応に関係している白血球の一種、好酸球によって引き起こされる肺炎のことです。原因や症状の経過によって、急性と慢性に分類されています。
細菌やウイルスによる感染で引き起こされる、一般的な肺炎とは異なります。
好酸球性肺炎は、特定の薬剤や化学物質、タバコ、寄生虫、カビ(真菌)などのアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を吸入することで発症する場合があります。また、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(主に喘息やアレルギー性鼻炎などの患者さんの中で、好酸球が異常に増え、体の様々な場所にある細い血管に炎症を起こす病気)など他の疾患が原因となることもあります。原因が不明な場合も多いです。
この記事では、好酸球性肺炎について症状や検査、治療についてご紹介します。
1.急性好酸球性肺炎
急性好酸球性肺炎は、喫煙開始後や禁煙に失敗し再度喫煙を始めた方がかかりやすいといわれています。具体的な症状や検査、治療について、以下でご説明いたします。
1-1.症状
症状は急速に進み、多くの方は7日未満の短期間で急性の熱性症状を引き起こします。熱性症状の主な症状は以下の通りです。
• 発熱
• 深呼吸によって悪化する胸痛
• 息切れ
• 乾いた咳
• 全身の倦怠感
• 筋肉痛
• 夜間の発汗
急性好酸球性肺炎の徴候として以下のような症状がみられます。
• 頻繁な呼吸
• 高熱(しばしば38.5℃以上)
診察では、肺の中の気体の流れが不均一で、何らかの肺の異常を示唆する音が聞こえたり(左右の肺の下側にある両側肺底部の吸気時の断続的なラ音)、意識的に呼吸した際に空気の通り道である気道の狭窄や閉塞によって生じる特有の呼吸音が聞こえたり(努力呼気時の類鼾音(るいかんおん))するのも兆候として確認できます。
症状の最も重要な特徴は、血液中の酸素レベルが急激に低下することです。
治療しない場合、病状は数時間から数日のうちに急性呼吸不全へと進行し、機械的人工換気が必要な急性呼吸不全になることがあります。
※呼吸不全:十分な酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するという肺本来の働きができなくなる状態
また、非常にまれですが、血管が広がりすぎて必要な臓器に十分な血液が届かなくなる血液分布異常性によるショック状態が起こることもあります。
【参考文献】一般社団法人 日本呼吸器学会『アレルギー性肺疾患 好酸球性肺炎』
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-03.html
【参考文献】”Eosinophilic Pneumonia” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23955-eosinophilic-pneumonia
1-2.検査
検査は、肺の状態を詳しく調べ、ほかの似た病気と区別するために重要です。以下のような種類の検査を組み合わせて行うのが一般的です。
<気管支鏡検査>
肺の内部を直接観察し、肺の洗浄液や肺組織のサンプルを採取します。肺組織内の好酸球の数が増加しているかを確認します。好酸球の増加は、急性好酸球性肺炎の診断の決め手です。
<胸部X線検査>
肺の異常を可視化するために使用されます。急性好酸球性肺炎では、X線上に特定の異常が見られることがありますが、これらの異常は他の肺疾患でも見られます。
<胸部CT検査>
胸部CT検査は、X線検査よりも詳細な画像が確認できます。とくに急性好酸球性肺炎の診断において重要であり、肺の異常をより正確に特定するのに役立ちます。
<血液検査>
血液検査では、血液中の好酸球の数を測定します。急性好酸球性肺炎では、好酸球の数が正常であることもあります。
1-3.治療
治療では、抗菌薬の使用は適切ではありません。急性好酸球性肺炎は感染症ではないので、抗菌薬は効果がないためです。
自然に治ることもありますが、一般的にはステロイド薬による治療を行います。ステロイド薬は炎症を抑える効果があるため効果的です。
ただし、好酸球性肺炎のなかには、ステロイド薬の減量に伴って再燃・再増悪をきたす症例があるため、注意深く漸減していく必要があります。
通常は治療開始後2週間から4週間以内で治るといわれています。
2.慢性好酸球性肺炎
慢性好酸球性肺炎は、実際にはその名前が示すような慢性的な疾患ではなく、再発性の急性または亜急性(急性と慢性の間で、徐々に進行する状態)の疾患です。
原因不明の好酸球性肺炎の中でも、2〜6ヶ月の経過をたどるものを指します。
急性好酸球性肺炎とは異なり、喫煙との直接的な関連は報告されていません。ほとんどの患者さんは非喫煙者であるとされています。
アレルギー体質や環境因子が原因に関与している可能性があるものの、その正確なメカニズムはまだ十分に解明されていないといわれています。
2-1.症状
症状は軽度から重度までさまざまです。
一般的に見られる症状として、発熱、咳や痰、全身の倦怠感などがあります。非常に軽いものから、重症で人工呼吸器を必要とするような深刻な状態まで進行するものまでさまざまです。
胸部の圧迫感や喘鳴(ぜんめい:呼吸時のヒューヒューゼーゼーする呼吸音)があることも報告されています。症状が再発する患者さんの中には、体重減少が見られる場合もあります。
一般的な肺炎と症状が似ているので、誤診されることがあり注意が必要です。
50%以上の慢性好酸球性肺炎の患者さんは喘息を併発しており、病状が重症化すると肺線維化(肺の組織が傷つき、硬くなること)を引き起こし、準呼吸不全の状態に至ることもあります。
2-2.検査
慢性好酸球性肺炎の主な検査は以下です。
<血液検査>
末梢血中の好酸球や免疫グロブリンE(IgE:アレルギー反応を引き起こす抗体)の値を測定します。慢性好酸球性肺炎では、好酸球の数が増加していることが一般的です。
<画像検査>
胸部X線検査や高分解能CT(HRCT:肺の異常をより詳細に観察できるCT検査)が行われます。これらの画像検査によって、肺の陰や好酸球の増加が確認されます。
<気管支肺胞洗浄>
口や鼻から気管支鏡と呼ばれる細く柔らかい肺カメラを通し、気管支内に生理食塩水を注入し気管支肺胞洗浄を行い、洗浄液に含まれる細胞を調べます。肺胞(肺の中で酸素と二酸化炭素を交換する小さな袋)内の好酸球の増加が確認されることがあります。
<その他の検査>
気管支鏡検査などの追加的な検査が行われることもあります。感染性の原因を除外するための培養検査も実施されることがあります。
2-3.治療
慢性好酸球性肺炎の治療には、ステロイド薬が効果的です。急性期にはステロイド大量投与が行われ、安定化し長期管理期に入ると経口ステロイド療法が行われます。
しかし、ステロイド薬での治療が終わってから再発することも多く、1年程度の経過観察が必要です。数か月から数年にわたるステロイド投与が必要な場合もあります。
3.おわりに
好酸球性肺炎は、肺の中に多くの好酸球が集まることが認められる特殊なタイプの肺炎です。好酸球は白血球の一種で、異常な増加は肺に問題があることを示唆しています。
好酸球性肺炎は正しい診断と治療を受けることで管理が可能ですが、放置すると深刻な状態を引き起こす可能性があります。
気になる症状がある場合は、早めに呼吸器内科の受診を検討しましょう。