喉が痛くなる原因と、呼吸器内科で扱う喉の痛みがある病気
風邪を引いて喉が痛くなることは、よくあります。そのような場合は、放っておいても自然と痛みが消えることがほとんどです。
しかし、なかなかよくならない時や、痛みが強い時は、思わぬ病気が隠れていることがあります。
この記事では、喉が痛い時に考えられる原因と、呼吸器内科で扱う病気を紹介します。喉の痛みや違和感が続いている人は、ぜひ参考にしてください。
1.喉の痛みの原因について
喉の痛みが現れる原因はさまざまであり、中には病気以外の原因もあります。
以下、主な原因です。
1-1.呼吸器感染症による炎症
風邪やインフルエンザ、コロナなどの呼吸器感染症により、喉の粘膜がウイルスや細菌に攻撃されると、防御反応として炎症が起こり、痛くなります。
1-2.アレルギー反応
ハウスダストやペットの毛など、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が体の中に入ってくると、それらの異物を外に追い出そうとして、免疫反応が起こることがあります。
その際、免疫の反応が過剰になると、誤って自分の体を攻撃してしまいます。すると、喉の痛みや不快感、息苦しさが現れることがあります。
花粉症や食物アレルギー(口腔アレルギー)の症状として、喉の痛みを感じることがあるのは、アレルギー反応が原因です。
【参考情報】『Allergies』Cleveland Clinic
1-3.喉の酷使
カラオケ、スポーツの応援、演説などで、長時間大声を張り上げたり、無理に声を出し続けると、声帯付近の粘膜が刺激され、炎症が起こります。
このような場合は、できるだけ喉を休めることが必要となります。
1-4.喉への刺激
タバコ、アルコール、激辛料理などが刺激となり、喉の痛みが出ることがあります。
タバコには有害物質が多く含まれており、喉への負担が大きいです。また、激辛料理は喉の粘膜を傷つけやすいので、食べすぎに注意しましょう。
1-5.喉の乾燥
喉が乾燥すると、ウイルスや細菌を体外に排出する力が弱くなり、炎症を起こすことがあります。特に湿気の少ない冬は、喉が乾燥して痛みを感じることが多くなります。
また、口呼吸をしている人も、喉が乾燥しやすくなるため、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなり、炎症を起こすことがあります。
1-6.喉に何かができている
声帯ポリープや扁桃周囲膿瘍、喉頭がん、咽頭がんなどがある場合は、喉に痛みや違和感が生じることがあります。
1-7.その他
逆流性食道炎や甲状腺疾患、ストレス(咽喉頭異常感症)など、呼吸器以外の疾患が原因で、喉が痛くなることもあります。また、魚の骨が喉に刺さって痛みが生じることもよくあります。
いずれにしても、喉の痛みが強くて、唾液を飲み込むのも辛いような時は、病院を受診しましょう。
2.呼吸器内科で扱う、喉の痛みがある病気
呼吸器内科で扱う、喉に痛みが出る病気を紹介します。
2-1.風邪
風邪のウイルスによって上気道に炎症が起こると、喉が痛くなります。
風邪で喉が痛くなっても、3日くらいで症状が和らぐことが多いです。しかし、喉の痛みが強くて辛い時は、溶連菌などの細菌や新型コロナウイルスに感染している可能性もあるので、病院を受診しましょう。
2-2.インフルエンザ
インフルエンザウイルスに感染すると、38度以上の熱や、筋肉痛、倦怠感が急激に現れ、その後遅れて 咳や痰、喉の痛みが生じます。
健康な大人なら、1週間から10日程度で回復しますが、発症後48時間以内に抗インフルエンザ薬を内服すると、回復までの期間が、さらに1~2日程度短縮できます。
2-3.気管支炎
風邪は上気道の炎症ですが、さらに呼吸器の奥深いところにある気管支に炎症が起こると、気管支炎となります。
風邪と同じように、咳や痰、喉の痛みが現れますが、風邪の時よりも症状が強く出ます。
2~3週間ほどで、自然と良くなることが多いのですが、小さい子は重症化することもあります。症状が激しくて辛いときは、病院を受診しましょう。
2-4.新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルスに感染すると、咳や喉の痛みが強く出ることがあります。「喉にガラスが刺さっているような痛み」と表現する人もいます。
中等症・重症の場合は、抗ウイルス薬を使うこともありますが、軽症の場合は、咳止め薬などの対症療法で治療する場合もあります。
【参考情報】『IDWR 2020年第16号<注目すべき感染症> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)』国立感染症研究所
2-5.喘息
気道に慢性的な炎症が起こり、咳が出る病気です。発作が起こると、息がしんどくなるほどの激しい咳が出て、なかなか止まらなくなります。
喘息の患者さんの喉(気道)は敏感になっているので、冷たい空気やホコリ、タバコの煙などを吸うと、痛みや違和感が生じることがあります。
日常生活ではできるだけ刺激を避けつつ、薬剤による治療で症状をコントロールしていきます。
2-6.咳喘息
喘息とよく似た病気ですが、喘息特有のヒューヒュー・ゼイゼイという呼吸音はなく、咳だけが何週間も続きます。風邪などの呼吸器感染症をきっかけに発症することが多いです。
咳喘息の人も、喉(気道)が敏感になっているので、喉の痛みやイガイガした違和感を覚えることがあります。
咳喘息を治療せずに放っておくと、喘息に移行することがあります。
2-7.花粉症
花粉症の症状は、鼻水や目のかゆみなど、鼻と目に現れることが多いのですが、喉の粘膜にもアレルギー症状が起こると、痛みやかゆみ、違和感を生じることがあります。
抗アレルギー薬の内服で症状が和らぎますが、薬の副作用として眠気が出ることがあります。
3.呼吸器内科で行う検査
呼吸器内科では、喉の痛みがある患者さんに対し、必要に応じて検査を行います。
3-1.胸部画像検査
X線(レントゲン)やCTで、肺の状態を確認します。肺に炎症が起こっていないか、異物があるかなどを調べます。
3-2.血液検査
血液の中の細胞や抗体を調べ、体の中が正常か異常かを判断します。
ウイルスや細菌に感染していると、白血球やCRP(タンパク質の一種)などのデータに異常が認められることがあります。
また、アレルギーの有無や、アレルギーを引き起こす物質を特定するために行うこともあります。
3-3.呼吸機能検査
喘息をはじめとした呼吸器の病気の診断のために行います。
主に、スパイロメーターという医療機器で、吸ったり吐いたりする時の空気の量を調べ、呼吸機能の程度と病気の重症度を判断します。
3-4.喀痰検査
痰の中に含まれる細菌や異常な細胞を調べる検査です。
肺炎や気管支炎の原因となっている細菌を特定したり、炎症やアレルギーにかかわる細胞の量を調べます。
3-5.PCR検査
採取した検体からウイルスの遺伝子を増やし、ウイルスを見つけやすくして検出する検査です。少ないウイルス量でも調べることができる反面、時間がかかります。
新型コロナウイルス感染症の流行で広く知られるようになった検査ですが、結核を調べる時にも行われます。
4.おわりに
喉が痛くなっても、しばらく様子を見ているうちに、治ってしまうことは多いでしょう。
しかし、なかなかよくならなかったり、痛みが激しくて辛い時は、病院を受診しましょう。
特に、「咳のし過ぎで喉が痛い」「喉にイガイガとした違和感を覚える」「市販薬を使っても喉の痛みがよくならない」場合には、呼吸器内科で相談することをおすすめします。