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咳止め薬の種類について

咳が長引くと、日常生活に支障をきたすだけでなく、夜間の睡眠不足や喉の痛みの原因にもなります。

そのため、忙しくなかなか病院を受診できない方は、市販の咳止め薬を試してみようと考える方も多いでしょう。

しかし、咳にはさまざまな種類があり、症状に合った薬を選ばなければ十分な効果が得られません。

また、咳が続く原因によっては、市販薬ではなく医師の診察が必要になる場合があります。

今回の記事では、市販の咳止め薬の種類と特徴について詳しく解説します。適切な薬選びの参考にしてください。

1.市販の咳止め薬


市販薬は、処方箋の必要がなく購入できるため、すぐに受診できない方にとって、強い味方です。

市販薬は一般医薬品とされており、「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」の3つの種類に分類されています。

咳止め薬の場合、第2類医薬品または指定第2類医薬品に分類されているものが多いです。

市販の咳止め薬には、咳の種類や症状に応じたさまざまな製品があります。次に紹介する薬は、市販で購入できる薬の例です。

・パブロンSせき止め
・プレコール持続性カプセル

それぞれの薬の効能や特徴、注意点について解説します。

市販薬は、軽い風邪による咳や一時的な症状の緩和を目的としたものがほとんどです。

自己判断で長期間服用するのは避け、服用前には必ず医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

1-1.パブロンSせき止め

パブロンSせき止めは、大正製薬から発売されている指定2類医薬品の咳止め薬です。

【効能・効果】
風邪や気管支炎による咳を和らげる効果がある薬です。乾いた咳や痰の絡む咳のどちらにも対応できる成分が配合されています。

【主な成分とその働き】
・ブロムヘキシン塩酸塩:痰を出しやすくする去痰成分
・dl-メチルエフェドリン塩酸塩:気管支を拡張し、呼吸を楽にする成分
・ジヒドロコデインリン酸塩:咳中枢に作用して咳を鎮める成分
・マレイン酸カルビノキサミン:ヒスタミンの働きを抑える成分
・ノスカピン:咳を鎮める非麻薬性鎮咳成分
・無水カフェイン:カフェインと同様の作用がある成分

【特徴】
乾いた咳と痰が絡む咳の両方に対応した成分が配合されています。

抗ヒスタミン成分が含まれているため、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状にも効果を発揮します。

【注意点】
抗ヒスタミン成分の影響で眠気が出ることがあるため、服用後の運転や機械作業は避けてください。
また、高血圧や心疾患がある方は、使用前に医師に相談してください。

5日以上服用しても症状が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。

1-2.プレコール持続性カプセル

プレコール持続性カプセルは、第一三共ヘルスケアから発売されている指定2類医薬品の咳止め薬です。

【効能・効果】
咳や鼻水、喉の痛みなど風邪による症状を総合的に緩和する効果がある市販薬です。

咳止め成分に加えて、痰を出しやすくし鼻炎を抑える成分も配合されています。

【主な成分とその働き】
・デキストロメトルファン臭化水素酸塩:咳を抑える鎮咳成分
・dl-メチルエフェドリン塩酸塩:咳を鎮め痰を出しやすくする成分
・クロルフェニラミンマレイン酸塩:アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン成分
・プソイドエフェドリン塩酸塩:痰を出しやすくする成分

【特徴】
1日2回の服用で持続した効果が期待できます。風邪による咳だけでなく、アレルギー性の咳やや鼻水の症状にも対応可能です。

【注意点】
眠気を引き起こす可能性がある成分が含まれています。服用後の車の運転や機械作業は避けてください。

プレコール持続性カプセルを服用中は、ほかの鎮咳去淡薬や抗ヒスタミン剤などを含む内服薬は使用しないでください。

3日間程度服用しても症状が改善しない場合は服用を中止し、医療機関を受診しましょう。

2.医師の処方箋が必要な咳止め薬


処方薬は市販薬に比べ、有効成分も多く含まれており、効果が強くよく効きます。

その反面、副作用が出やすいので、服用には必ず医師の診察が必要です。

長引く咳や重症の気管支炎、肺炎などの病気が疑われる場合には、市販薬ではなく、医師が処方する薬での治療が効果的です。

◆「長引く咳」で疑われる疾患について>>

◆「気管支炎」とは>>

◆「肺炎」とは>>

代表的な処方薬には以下のような薬があります。

・リン酸コデイン
・チペピジン
・デキストロメトルファン

これらの咳止め薬について解説していきます。

2-1.リン酸コデイン

「コデインリン酸塩水和物」と呼ばれる成分です。

【効能・効果】
リン酸コデインは、中枢性鎮咳薬(ちゅうすうせいちんがいやく)に分類され、脳の咳中枢に直接作用して咳の反射を抑える効果があります。

乾いた咳や激しい咳、痰が絡む咳など幅広い咳に有効です。慢性気管支炎や肺炎、結核などの呼吸器疾患による咳に対して処方されます。

【特徴】
強力な鎮咳作用があり、咳の反射を抑えるため、頑固な咳に効果的です。

モルヒネに似た構造を持っているため、麻薬性鎮咳薬に分類されています。疼痛(とうつう・ずきずきとうずくような痛み)緩和や激しい下痢症状の緩和目的で使用する場合もあります。

【注意点】
リン酸コデインは麻薬性鎮咳薬に分類されるため、長期間の使用や過剰摂取によって依存が生じる可能性があります。
医師の指示通りに服用することが重要です。

副作用として、眠気やめまい、吐き気、呼吸抑制(呼吸が浅くなる)などの症状があらわれることがあります。

また、このリン酸コデインを含む薬剤は、12歳未満の小児には使用が禁止されています。

呼吸が抑制されるリスクがあるため、小児の咳止めとしては使用できません。

【参考情報】『コデインリン酸塩等の12歳未満の小児における使用の禁忌移行について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000522038.pdf

2-2.チペピジン(商品名:アスベリン)

「チペピジンクエン酸塩」と呼ばれる成分です。

【効能・効果】
チペピジンは、非麻薬性の中枢性鎮咳薬であり、咳中枢を抑えると同時に気道の炎症を鎮める作用を持ちます。

痰を出しやすくする去痰作用もあり、乾いた咳・湿った咳の両方に効果的です。
風邪や気管支炎、気管支拡張症など幅広い呼吸器疾患に使用します。

【特徴】
散剤やシロップ、錠剤などさまざまな剤形があり、小児から高齢者まで幅広い年齢で使用できる薬です。

【注意点】
眠気やめまいが出ることがあるため、運転や危険な作業を行う際は注意が必要です。

まれにアレルギー反応(発疹、かゆみなど)が出ることがあるため、異常を感じた場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

妊娠中や授乳中の方は、医師と相談の上で使用することが推奨されています。

【参考情報】『日本薬局方 チペピジンヒベンズ酸塩錠』医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530100_2249003B1037_3_01

◆「気管支拡張症」」とは>>

2-3.デキストロメトルファン(商品名:メジコン)

「デキストロメトルファン臭化水素酸塩」と呼ばれる成分です。

【効能・効果】
デキストロメトルファンは、中枢性鎮咳薬の一種で、脳の咳中枢に作用して咳を鎮めます。

麻薬性鎮咳薬であるコデインとは異なり、依存性がなく、安全性が高いことが特徴です。
主に、乾いた咳(空咳)に対して処方されます。

【特徴】
風邪や気管支炎、肺炎などの長引く空咳に使用されます。

市販薬にも含まれている成分で、安全性が比較的高いのが特徴です。
剤形は、散剤や錠剤、シロップがあります。

【注意点】
眠気やめまいが出ることがあるため、運転や機械の操作には注意が必要です。

また、気管支喘息の方は、発作の際に症状を悪化させる可能性があるため、使用前に必ず医師と相談してください。

◆「メジコン」の特徴と効果>>

【参考情報】『鎮咳剤 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物製剤』医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/343018_2223001B1210_2_04

【参考文献】”Dextromethorphan: MedlinePlus Drug Information” by U.S. National Library of Medicine
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a682492.html

3.市販薬と処方薬の違い


市販薬と処方薬の大きな違いは、有効成分の種類や含有量です。

市販薬は、医師の診察を受けずに使用できる薬ですが、自分の症状に合わせた薬を選ぶ必要があります。
迷った際には、薬剤師や登録販売士に相談して選びましょう。

処方薬は、医師の診断のもとで適切に使用することを前提としています。
診察を受け、処方箋を発行してもらい、調剤薬局で受け取ります。

処方薬は、市販薬よりも強い作用を持つ成分が含まれることが多く、効果も高い反面、副作用のリスクも伴います。

処方薬には「一般名(有効成分の名前)」と「商品名(製薬会社がつけた名前)」があります。

たとえば、喘息やアレルギー性鼻炎に使用する「モンテルカスト」という成分を含む薬は、「キプレス」や「シングレア」といったメーカーごとに異なる商品名で販売されています。

同じ成分・効能の薬でも、製薬会社によって名称が異なるため、処方された薬の成分を知っておくことは重要です。

また、市販の感冒薬はあくまでも「かぜ症候群が自然治癒するまでの期間の症状を和らげる」というスタンスであることを理解することが大切です。

自然治癒するかぜ症候群以外の原因がある慢性咳嗽の原因を除去する薬剤ではありませんので長期に使用することは危険であると考えてください。

麻薬性鎮咳薬であるリン酸コデインも短期使用であればいいですが長期使用するのは厳に避けたほうがいいと考えてください。

4.咳止め薬を選ぶ際のポイント


咳止め薬にはさまざまな種類があるため、自分の咳の症状に合わせて適切なものを選ぶことが大切です。

以下のポイントを参考にしてください。

4-1.咳のタイプを見極める

咳には「乾いた咳(空咳)」と「湿った咳(痰が絡む咳)」があります。

乾いた咳:喉の奥がむずがゆく、痰が出ないのが特徴です。
風邪の初期やウイルス感染、アレルギー、喉の乾燥などが原因になることがあります。

この場合は、鎮咳成分(咳を抑える成分)を含む薬が適しています。

湿った咳:痰が絡んでおり、のどや気管支に炎症があるサインです。
痰を外に出すことが重要なため、去痰成分(痰を出しやすくする成分)を含む薬を選びましょう。

市販薬の多くは両方に対応する成分が配合されていますが、自分の症状をよく観察することが重要です。

【参考文献】”What Is the Best OTC Cough Medicine for My Cough?” by Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/cough-syrup-cough-drops-menthol-rub-whats-best-for-my-cough

4-2.眠気や副作用に注意する

抗ヒスタミン成分を含む薬には、眠気を引き起こすものがあります。

車の運転や仕事に影響する可能性があるため、日中に使用する場合は注意が必要です。

また、高血圧や心臓病、緑内障、前立腺肥大などの持病がある方は、使用できない成分が含まれている可能性があります。

購入前に医師または薬剤師に相談しましょう。

4-3.咳が長引く場合は医療機関へ

市販薬は一時的な症状の緩和に役立ちますが、以下のような場合は必ず医療機関を受診してください。

・咳が2週間以上続く
・呼吸が苦しい
・痰に血が混じる
・発熱が続く
・夜間に咳で眠れない

長引く咳は、気管支炎や肺炎、喘息、COPD、結核などの重大な疾患のサインである場合があります。

咳を止めることよりも、原因となる病気を特定し、適切な治療を行うことが大切です。

【参考文献】”Over-the-counter (OTC) medications for acute cough in children and adults” by Cochrane
https://www.cochrane.org/CD001831/ARI_over-the-counter-otc-medications-for-acute-cough-in-children-and-adults-in-community-settings

5.おわりに

咳止め薬には、市販薬と処方薬があり、それぞれに特徴や効果が異なります。

市販薬は一時的な症状の緩和に役立ちますが、症状が長引く場合や重症化している場合は、医師の診察を受けることが大切です。

特に、長引く咳や息苦しさ、発熱を伴う場合は、単なる風邪ではなく気管支炎や肺炎などの可能性もあるため、自己判断で市販薬を使い続けるのは避けましょう。

咳の原因に合った適切な治療を受けるためにも、市販薬を服用しても改善しない場合は、早めに呼吸器内科を受診することをおすすめします。

◆「呼吸器内科で息苦しい原因を調べましょう」>>