咳喘息が疑われるときの市販薬の使用について解説
咳喘息が疑われる乾いた咳に市販薬を使う場合は、あくまで一時的な症状対策として考えます。
咳が始まって間もない場合は、痰の有無が、咳を和らげる薬と痰を出しやすくする薬を見分ける一つの目安になります。
この記事では、咳喘息が疑われる方を中心に、市販薬の種類や注意点、受診の目安を解説します。
1. 咳喘息とはどのような病気か

市販薬を選ぶ前に、まず咳喘息の特徴と、一般的な風邪の咳との違いを整理しましょう。
1-1. 咳喘息の基本的な特徴
咳喘息は、気道(空気の通り道)が刺激に敏感になり、乾いた咳が続くことのある病気です。
一般的な喘息でみられるゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音や、強い息苦しさが目立たず、咳だけが続く場合もあります。
咳は、夜間や明け方に強くなったり、会話や運動、冷たい空気、ほこりや煙などの刺激で出やすくなったりすることがあります。
1-2. 風邪の咳との違い
風邪による咳は、ほかの症状と一緒に現れ、時間の経過とともに軽くなることが一般的です。
一方で、咳が長引く場合は、咳喘息以外にもさまざまな原因が考えられます。
風邪の咳でみられやすい特徴
・咳に加えて、鼻水、喉の痛み、発熱、だるさなどを伴うことがある
・一般的には、ほかの症状とともに少しずつ軽くなっていく
長引く乾いた咳で考えられる主な原因
・咳喘息
・感染症の後に残る咳(感染後咳嗽)
・鼻水が喉へ流れる後鼻漏
・薬の副作用 (ACE阻害薬など)
・胃酸が逆流する胃食道逆流症
・アレルギー(花粉症・ハウスダストなど)
ただし、これらの症状だけで原因を判断することは難しいため、咳の特徴や続いている期間、ほかの症状などを合わせて確認することが大切です。
2. 咳の症状に合わせた市販薬の種類

市販の咳止め薬は、主に咳を和らげる鎮咳薬(ちんがいやく)と、痰を出しやすくする去痰薬に分けられます。
2-1. 鎮咳薬の一般的な用途
鎮咳薬は、咳を起こす反射を弱め、一時的に咳を和らげる目的で使われます。
代表的な成分のデキストロメトルファンは、脳にある咳の中枢に働きかける成分です。
ただし、咳の原因となる病気を治したり、回復を早めたりする薬ではありません。
【参考情報】『Dextromethorphan: MedlinePlus Drug Information』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a682492.html
また、コデイン、ジヒドロコデインを含む医薬品は、12歳未満には使用しないこととされています。対象年齢は成分や製品によって異なります。
なお、コデインを含む医薬品は、成人でも喘息の発作時には原則として使用できません。
【参考情報】『コデインリン酸塩水和物又はジヒドロコデインリン酸塩を含有する医薬品の「使用上の注意」改訂について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2795&dataType=1&pageNo=1
2-2. 去痰薬の一般的な用途
去痰薬(きょたんやく)は、粘り気のある痰を出しやすくする目的で使われます。
市販薬に配合されることのある成分には、L-カルボシステイン(ムコダイン) 、ブロムヘキシン、グアイフェネシンなどがあります。
L-カルボシステインは気道の粘液を整える目的で使用されることが多いとされています。
ブロムヘキシンやグアイフェネシンは痰を薄めて外へ出しやすくする目的で用いられます。
【参考情報】『Guaifenesin: MedlinePlus Drug Information』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a682494.html
2-3. 配合薬に含まれる成分
総合かぜ薬や鎮咳去痰薬には、鎮咳成分と去痰成分に加えて、鼻水を抑える抗ヒスタミン成分などが一緒に入っていることがあります。
成分が多い製品ほど、自分の咳に合うとは限りません。
抗ヒスタミン成分などを含む製品では、眠気や口の渇きが現れる場合があります。
運転や危険を伴う機械の操作に関する注意が記載されている製品もあるため、使用前に確認しましょう。
【参考情報】『Q3 くすりの使用中に自動車運転をしてよいか、どのように確認すればよいですか?』医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0018.html
3. 乾いた咳と痰のある咳で考える市販薬の種類

咳の音だけでなく、痰の有無や咳が続いている期間や、ほかの症状も合わせて確認します。
3-1. 乾いた咳の特徴
乾いた咳は、痰がほとんど出ず、「コンコン」と軽い音で続く咳です。
咳が出始めたばかりで、風邪の症状に伴って一時的に起こっている場合は、鎮咳成分を含む市販薬が症状を和らげる目的で使われることがあります。
一方で、夜間や明け方に咳が強くなる、風邪が治った後も咳だけが続く、同じような咳を繰り返す場合は、咳喘息など別の原因が関係している可能性があります。

3-2. 痰のある咳の特徴
痰のある咳は、「ゴホゴホ」「ゼロゼロ」と湿った音がし、痰を外へ出そうとして起こります。
痰が粘って出しにくい場合は、去痰成分を含む市販薬が症状対策として使われることがあります。
ただし、痰のある咳は風邪や気管支炎だけでなく、喘息、後鼻漏、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などでもみられます。
痰が急に増えた、血が混じる、発熱や息苦しさを伴う場合は、市販薬だけで様子を見ないことが大切です。
3-3. 判断しにくい咳への対応
乾いた咳と痰のある咳が混ざる場合や、鼻水、発熱、喉の痛みを伴う場合は、必要な成分を判断しにくくなります。
総合かぜ薬などを使用中のときは、自己判断で別の咳止め薬を追加しないようにしましょう。
総合かぜ薬と咳止め薬を一緒に使うと、鎮咳成分、抗ヒスタミン成分、解熱鎮痛成分などが重複するおそれがあるため、自己判断で組み合わせることは避けましょう。
4. 咳喘息が疑われるときの市販薬使用の注意点

咳喘息が疑われる場合は、市販薬で対応できる範囲と、医療機関で原因を確かめるべき範囲を分けて考えます。
4-1. 市販薬を使う場合の考え方
市販薬を使う場合は、咳が出始めたばかりの時期に、一時的に症状を和らげる目的で使用するものと考えます。
一時的に咳が楽になっても、原因となっている病気が改善しているとは限りません。
咳が続く場合は、薬を何度も替えたり、長期間使い続けたりせず、原因を確認することが大切です。
4-2. 咳喘息と診断済みの場合の併用に注意
すでに咳喘息と診断されている方は、処方された吸入薬や飲み薬を、市販の咳止め薬に置き換えないようにしましょう。
処方薬には、気道の炎症を抑えたり、狭くなった気道を広げたりする目的の薬があり、一般的な市販の咳止め薬とは役割が異なります。
【参考情報】『Q1 医師が処方するくすりと市販のくすりはどのようにちがうのですか?』医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0025.html
症状が落ち着いていても、処方薬の回数や量を自己判断で変更しないでください。
風邪などで市販薬の使用を考えている場合は、現在の処方内容を伝え、主治医や薬剤師に併用できるか確認してください。
5. 市販薬で様子を見る場合と受診の目安

咳喘息が疑われる咳の中には、早めに受診した方がよいケースがあります。
ここでは、 市販薬で様子を見てもよい咳と、早めに医療機関で確認した方がよい咳、緊急性の高い症状を整理します。
5-1. 様子を見てもよいケース
一般的には、咳が出始めてから数日程度で、風邪に伴う鼻水や喉の痛みなどがあり、少しずつ症状が軽くなっている場合は、市販薬を使いながら様子を見ることがあります。
このような場合でも、市販薬を使用するときは、決められた用法・用量と期間を守ることが大切です。
【参考情報】『Q6 市販のくすりを使用する場合、どんなことに注意したらよいですか?』医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0011.html
ただし、市販薬で改善しない場合や、発疹、強い眠気、息苦しさなどが現れた場合は使用を中止し、医療機関または購入先へ相談してください。
5-2. 早めに受診した方がよいケース
次のような場合は、市販薬を使い続けるだけではなく、医療機関で咳の原因を確認することを検討してください。

・2週間以上咳が続いている
・夜間や明け方の咳で目が覚める
・市販薬を用法どおり使用しても改善しない
・会話や運動、笑ったときに咳が出やすい
・冷たい空気や気温差で咳が強くなる
・同じような咳を何度も繰り返している
・ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音がある
・発熱や強いだるさ、体重減少を伴っている
・高熱が続き、水分を十分に取れない
・血痰が出る
これらの特徴があるからといって、必ず咳喘息とは限りません。
咳喘息のほか、喘息、肺炎、結核、後鼻漏、胃酸の逆流などでも長引く咳がみられるため、原因を調べることが大切です。
5-3. すぐに受診を検討すべきサイン
次のような症状がある場合は、早めの対応が必要になることがあります。
・息苦しくて会話を続けられない
・唇や皮膚が普段より著しく青白い、青紫色、または灰色がかっている(チアノーゼ)
・咳とともに多量の血が出る
・血痰に強い息苦しさ、胸痛、動悸を伴う
・胸に強い痛みや圧迫感がある
・意識がぼんやりしている
・短時間で呼吸状態が急に悪化した
特に、呼吸困難で言葉が出ない、胸が締めつけられる、唇や皮膚の色が大きく変化する、急に混乱するといった症状は、緊急性が高いサインとして挙げられています。
これらの症状がある場合や、救急車を呼ぶべきか、今すぐ受診すべきか判断に迷う場合は、地域の救急相談窓口「救急安心センター(#7119)」に相談する方法もあります。
症状に応じた相談や受診の目安についてアドバイスを受けることができます。
【参考情報】『救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?』総務省消防庁
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html
6.おわりに
咳喘息が疑われる乾いた咳に、市販薬が一時的な症状対策として使われることはあります。
短期間の咳では、痰がほとんどなければ鎮咳薬、痰が絡むなら去痰薬という分類が、選ぶ際の目安になります。
ただし、市販薬は咳喘息の気道炎症を治療する薬ではありません。
成分の重複や対象年齢を確認し、2週間以上咳が続く場合や夜間・明け方に悪化する場合、息苦しさや血痰がある場合は、医療機関で原因を確かめることが大切です。
