喘息の人が気を付けたいエアコンの使用方法

エアコンは便利な道具であり、快適に生活するためには欠かせないものといえるでしょう。
しかし、喘息を持つ方や、そのご家族にとって、エアコンの使用は気を付けるべきポイントが多くあります。
エアコンの設定や使用方法によっては、喘息発作を誘発する要因となることもあるため、正しい使い方を知ることが重要です。
今回の記事では、喘息の方がエアコンを使用する際に気を付けるべきポイントについて詳しく解説します。
エアコンによる体調悪化を防ぎ、快適に過ごしましょう。
1.エアコン使用時の注意点4つ
エアコンの使用は、快適さをもたらす一方で、使い方を誤ると喘息の症状を悪化させる原因になります。
そのため、喘息の方にとってエアコンの使用は必ずしも快適なものとは限りません。
適切に使用しないと、喘息の症状を悪化させる原因となります。
以下は、エアコン使用時の注意点です。
・温度差(寒暖差)
・冷気
・乾燥
・アレルゲンの発生
ここでは、喘息の人がエアコンを使用する際に特に注意すべき4つのポイントについて解説します。
【参考情報】”Asthma-friendly home” by Better Health Channel
https://www.betterhealth.vic.gov.au/health/conditionsandtreatments/asthma-friendly-home
1-1.温度差(寒暖差)
喘息の症状は、気温の急激な変化が影響し、悪化することがあります。特に、暖かいところから寒いところへ移動する場合には注意が必要です。
外気温と室内温度の差が大きいと、気道が刺激されて咳や息苦しさを引き起こす可能性が高まります。
そのため、エアコンの設定温度は、外気温との差を5℃以内に抑えることが理想的です。
理由として、温度差5℃以内であれば、気道への影響が出にくいとされているからです。
たとえば、外の気温が30℃の場合、25℃以下の冷房が効いた室内に入るとすると、寒暖差が大きくなり、喘息の症状があらわれやすくなります。
また、冬場に暖かい部屋から寒い廊下に出た場合にも、同様に咳などの症状があらわれるケースがあります。
室内温度と外気温の差がある場合には、外出する前に一度エアコンの設定温度を外気に近づけてから出ると、急激な寒暖差による影響を和らげることができます。
気温差や寒暖差は、エアコンの使用をしているときだけでなく、季節の変わり目には自然に生じることもあります。
喘息症状を予防するためには、温度調節をこまめに行い、急激な気温の変化を避けるようにしましょう。
また、冷気が直接当たり体が冷えるのも良くありません。体が冷えたうえ、冷たい空気を吸い込むと、気道が収縮し喘息症状があらわれるリスクが高まります。
エアコンの上手な使い方として、エアコンの風向きを調整し、冷風を直接吸い込まないように配慮しましょう。
特に夜間は喘息症状が出やすい時間帯のため、就寝時のエアコンの風向きや寝室との温度差に注意が必要です。
扇風機やサーキュレーターを活用して空気を循環させるのも効果的です。
【参考情報】『天気とぜん息の関係を知っておきましょう②(全3回)』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202207_2/
【参考情報】”Weather Triggers Asthma” by Asthma and Allergy Foundation of America
https://aafa.org/asthma/asthma-triggers-causes/weather-triggers-asthma/
1-2.冷気
喘息の方は、気道に慢性的な炎症が起きている状態です。そのため、冷気を吸い込むことは直接的な気道への刺激となり、気道の収縮を引き起こしやすくなります。
「冷たい空気を吸い込む」というと、冬を想像しますが、夏の冷房が効いた部屋も同様です。
暑いところから冷房の効いた部屋に急に入ったり、冷たいエアコンの風が直接顔や首に当たったりすると、気道が収縮し、咳や息苦しさが出ることがあります。
冷気の影響を抑えるためには以下のポイントを押さえ対策をしましょう。
・エアコンの風向きを調整して直接冷たい空気を吸い込まないようにする
・エアコンの設定温度を適切にする
・空気が冷えたところへ行くときはマスクをする
冷房の設定温度は極端に低くせず、適度な温度(25~27℃程度)に保つことが大切です。
また、冬は暖かい部屋から寒い屋外へ出ると、冷たい空気を直接吸い込むことになります。
マスクを着用したりマフラーで首元を温めたりするのも予防効果があります。
【参考情報】『寒冷地に居住する気管支喘息患者の冬期の症状に関する検討』日本アレルギー学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/53/5/53_KJ00002641029/_pdf/-char/ja
【参考情報】”Cold Air and Asthma = Winter Asthma” by Allergy and Asthma Network
https://allergyasthmanetwork.org/news/cold-air-asthma-in-winter/
1-3.乾燥
乾燥した空気は気道の粘膜を刺激し、咳や息苦しさを引き起こす原因です。
エアコンで暖房を使用すると、室内の空気が乾燥しやすくなります。
空気が蓄えられる水分量は、空気の温度によって異なるため、温度が高いほど多くの水分を含むことができます。
しかし、エアコンの暖房は、空気を直接暖めて部屋全体の温度を上げる仕組みのため、空気中の水分量は増えません。
自然に水蒸気は発生しないため、空気中の水分は増えずに、温度だけが上昇します。そのため、エアコンで暖房を使うと空気が乾燥してしまうのです。
空気の乾燥は気道の刺激だけでなく、以下のようなことも引き起こします。
・ウイルスの活動が活発になり感染症の蔓延を引き起こす
・室内のホコリが舞いやすくなる
・鼻やのど、目など粘膜が乾燥する
これらの要因も喘息症状を悪化させる原因となります。空気の乾燥を防ぐためには、温度管理だけでなく湿度の管理も重要です。
理想的な室内湿度は40~60%とされており、これを維持することで喘息の症状を軽減できます。
湿度が40%を下回る場合、気道が乾燥し、喘息症状が出やすい状態です。また、ウイルスの活動が活発になるため、感染症にも気をつけなければなりません。
室内が乾燥している場合には、以下のような対策を行いましょう。
・加湿器を活用する
・洗濯物を室内に干す
・濡れたタオルを置く
・カーテンに霧吹きをする
・観葉植物を置く
冬場の暖房はエアコンだけに頼るのではなく、床暖房やオイルヒーターなど、空気が乾燥しにくい暖房器具を使用するのも乾燥対策としてはおすすめです。
また、加湿機能付きのエアコンも販売されているため、買い替えのタイミングでそのような機能が付いているエアコンを検討してもよいでしょう。
夜間、就寝時にエアコンの暖房を使用する場合には特に乾燥に注意が必要です。
夜間は喘息症状が出やすい時間帯です。就寝中に暖房をつけっぱなしにしていると、空気が乾燥し、さらに症状があらわれやすくなります。
湿度を保つことで、気道の乾燥を防ぎ、夜間の咳を軽減できます。
寝室の乾燥対策は十分に行いましょう。就寝時に、マスクを着用するのも効果的です。
反対に湿度が60%を超えると、カビが繁殖しやすい環境になります。カビは喘息症状の悪化を招きます。
湿度が高い場合には、エアコンの除湿機能を使ったり、除湿器や除湿剤を活用したりして、湿度を調整しましょう。
【参考情報】『部屋の湿度は何%が適正?』名古屋市上下水道局
https://www.water.city.nagoya.jp/uruoi_life/category/learn/144531.html
【参考情報】”Why Asthma Is Worse in Winter” by Temple Health
https://www.templehealth.org/about/blog/why-asthma-worse-in-winter
1-4.アレルゲンの発生
エアコンの内部は、ホコリやカビ、ダニが溜まりやすい環境です。これらは、アレルゲンとなり喘息の方にとって悪影響を及ぼします。
エアコンの掃除をしていないと、これらのアレルゲンが空気中に拡散され、喘息の症状を悪化させる要因となります。
そのため、エアコンを使用する際は、こまめな掃除が必要です。
以下のようなエアコン掃除のポイントを押さえておきましょう。
・フィルターは2週間に1回掃除
・エアコン内部の清掃は専門業者に依頼
・エアコンをつける前に換気
フィルターはホコリやカビ、ダニが溜まりやすい部分のため、2週間に1回のこまめな掃除が理想的です。
エアコン内部の掃除は、市販のエアコンクリーナーなどで行うと手軽に掃除ができます。
エアコンを自分で掃除する場合のポイントは以下の通りです。
・換気をしながら掃除を行う
・アレルゲンを吸い込まないようマスクを着用する
・アレルゲンが付着しそうなものはビニールで覆うか別の部屋へ移動する
・エアコン掃除終了後は部屋全体も掃除する
掃除中はホコリやダニなどのアレルゲンが舞うことが予想されます。アレルゲンを吸い込まないよう対策が必要です。
しっかりマスクを着用し、換気を行いながら掃除をしましょう。エアコン掃除終了後は、舞い広がったアレルゲンの除去のため、換気を行い部屋全体を掃除しておくと安心です。
エアコンの設置位置は高さもあるため、自分で行う場合には、転倒に注意しましょう。
しかし、自分で行う掃除では、なかなか行き届かないケースも多いです。
そのため、定期的に専門業者に依頼し、年に1~2回ほど内部の掃除をしてもらうと効果的です。
久しぶりにエアコンを使用する場合には、その前に業者に掃除を依頼しておくと、エアコン内に溜まったアレルゲンを除去できるため、快適に使用できます。
また、エアコンをつける前には換気をしたり、空気清浄機を併用したりすると、室内のアレルゲンを減らす効果があり、喘息症状の予防に有効です。
◆「喘息などアレルギー症状の引き金となるカビ、掃除で注意すべきポイントについて」>>>>
【参考情報】”IMPACT OF VENTILATION AND AIR CLEANING ON ASTHMA” by National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK224478/
2.おわりに
エアコンによる適切な室温管理は健康維持のためには有用な手段です。
留意しておく問題点については①湿度管理は別途必要な場合が多いこと、②どうしても内部が湿潤・適温になりやすい関係上、目に見えない部分にカビなどが繁殖しやすいので定期的な清掃チェックが必要であることです。
喘息の方にとって、エアコンの使用は快適さをもたらす一方で、使い方を誤ると症状を悪化させる原因になります。
寒暖差、冷気、乾燥、アレルゲンの発生といったポイントに注意し、適切にエアコンを使用することが大切です。
適温・適湿を保ち、こまめな掃除を心掛けることで、喘息の症状を悪化させることなく、快適な環境で過ごすことができるでしょう。
適切に使用して健康管理に生かしていってください。
喘息症状の悪化は、エアコンだけが原因ではありません。
継続した治療と規則正しい生活が基本です。また、疲れやストレスを溜めないことも大切です。
健康管理の一環として日々のエアコンの使い方を見直し、喘息症状を悪化させないよう、上手に付き合っていきましょう。
また、咳が長く続くなどの症状がある時には、他の病気の可能性もあります。
呼吸器内科では、画像検査、血液検査、呼吸機能検査などで咳の原因を特定することが可能です。
症状が収まらない場合は、早めに呼吸器内科などの病院の受診を検討しましょう。