咳による胸の痛み。考えられる理由や病気について
咳が出ているときに胸に痛みを感じた経験はあるでしょうか。
ただでさえ苦しい咳と同時に胸に痛みを感じたら、とても不安を感じると思います。
咳により胸の痛みが現れた場合、早めに対処が必要な疾患が潜んでいることもあります。
今回の記事では、咳で胸が痛むときに考えられる理由や病気について説明します。重要な病気を見逃すことのないよう、症状に悩んでいる人は参考にしてください。
1.咳で胸の痛みが出る理由
咳により胸が痛む場合、以下のようなことが原因となっている可能性があります。
1-1.咳のしすぎが原因の筋肉痛
咳が長く続くと胸の筋肉に大きな負荷がかかります。この状態が続くことで筋肉痛になり、咳をするたびに痛みを感じてしまうことがあります。
さらに激しい咳や長引く咳で痛みを感じる時には、胸の骨(肋骨)が疲労骨折を起こしている
可能性もあります。
胸の疲労骨折は繰り返し負荷がかかることで起きるため、咳を抑えることと、整形外科への受診が必要です。
咳だけではなく、起き上がりや動くだけでも痛みを感じる場合は早めに受診するようにしましょう。
1-2.肺炎
肺炎は細菌やウイルス感染が原因で肺に炎症が起きる病気です。
体力や免疫力が落ちてしまうと、風邪やインフルエンザなどから肺炎に進行してしまうことがあります。
<肺炎のおもな症状>
・長引く風邪
・悪寒を伴う高熱
・咳や痰の増加
・胸の痛みや息苦しさ など
肺炎は肺に炎症が起きた状態ですが、さらに悪化すると胸を覆っている膜(胸膜)に炎症が広がり、強い痛みを感じるようになります。
呼吸をするだけでも痛みを感じるような場合には注意しましょう。
【参考文献】”Pneumonia” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pneumonia/symptoms-causes/syc-20354204
◆「肺炎」について詳しく>>
1-3.肺結核
肺結核は結核菌の感染により発症する病気です。肺結核の人の咳からしぶきが飛び、それを多く吸い込んでしまうことで感染する可能性があります。
<肺結核のおもな症状>
・咳
・痰
・発熱、だるさ など
はじめは症状が軽くゆっくり進行しますが、悪化すると胸の痛みが出てくることがあります。
2週間以上続く咳や血痰が出る場合は早めに受診するようにしましょう。
【参考情報】『感染性呼吸器疾患』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-07.html
1-4.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の最大の原因は喫煙です。
タバコの煙に含まれる有害物質を長く吸い込むことで、空気の通り道である気管支に炎症が起き、症状が現れます。炎症が起きた気管支は狭くなり、空気が通りにくい状態です。
おもな症状は以下の通りですが、進行すると胸の痛みが現れることがあります。
<COPD(慢性閉塞性肺疾患)のおもな症状>
・咳や痰
・身体を動かした時の呼吸困難
【参考情報】『気道閉塞性疾患』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html
◆「COPD」について詳しく>>
1-5.心臓疾患
咳と胸の痛みがある場合、呼吸器系の病気を疑いますが、心臓の病気が潜んでいることもあります。
咳や胸の痛みが現れる心臓の病気には狭心症、心筋梗塞、僧帽弁閉鎖不全症などがあり、いずれも早めの受診と治療が必要な病気です。
【参考文献】”Heart disease” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/heart-disease/symptoms-causes/syc-20353118
1-6.気胸
突然、胸痛を感じた場合、気胸の可能性があります。
気胸は、突然肺に穴が開いて、肺から空気が漏れ出す病気です。
主な症状は、胸や背中の痛み、咳や息苦しさ、呼吸困難などがあります。
さまざまな原因により引き起こされることがあり、ほとんどの肺の病気が原因となる可能性があります。その一方で、肺に疾患がない・特定の原因がなくても発症することがあります。
気胸により肺が縮むと痛みを感じ、それが刺激となり咳が現れます。
2.胸の筋肉痛が現れるほど、咳が出る疾患
激しい咳や長引く咳を引き起こす疾患では胸の筋肉痛を引き起こすことがあります。
2-1.喘息
喘息はアレルギーなどが原因で気道(空気の通り道)に炎症が起きる病気です。
気道が炎症を起こすことでアレルゲンやストレスなどが原因となり、発作が起きるようになります。
<喘息のおもな症状>
・咳や痰
・「ヒューヒュー」「ゼーゼー」とした呼吸音(喘鳴:ぜんめい)
・息苦しさ など
喘息がコントロールできていないと咳が長引き、胸が筋肉痛を起こし、咳をした時に痛みを感じるようになります。
【参考文献】”Asthma” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6424-asthma
◆「喘息」について詳しく>>
2-2.咳喘息
咳喘息は風邪やウイルス感染による呼吸器感染症がきっかけで起きることが多い病気です。
アレルギーやストレスなども原因となることがあり、咳が3週間以上続く場合は咳喘息や喘息を疑います。
<咳喘息のおもな症状>
・乾いた咳
・「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という喘鳴はない
・会話や声を出すだけでも咳が出やすい
・季節の変わり目や気圧の変化で咳が出やすくなる など
咳喘息の場合、長く続く咳が特徴のため、胸への負担がかかり筋肉痛により咳での痛みを感じることがあります。
【参考文献】”Asthma Cough” by American College of Allergy Asthma and Immunology
https://acaai.org/asthma/symptoms/asthma-cough/
◆「咳喘息」の症状とは>>
2-3.新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は発熱や咳、頭痛などの症状を起こす病気です。
味覚障害などさまざまな症状が報告されていますが、後遺症として咳が長く続くこともあります。
激しい咳や長く咳が続くことで筋肉痛になり胸の痛みを感じることがあります。
【参考文献】”COVID-19” by Centers of Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/index.html
◆「新型コロナウイルス」について詳しく>>
2-4.マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は発症すると発熱、倦怠感、頭痛などの症状が現れ、数日後から咳が出るようになります。
徐々に咳は強くなっていき、激しい咳が1か月ほど続くことで胸が筋肉痛になり痛みを感じることがあります
【参考情報】『マイコプラズマ肺炎とは』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html
◆「マイコプラズマ肺炎」について詳しく>>
2-5.百日咳
百日咳は菌の感染後、発症すると普通の風邪症状から始まり、徐々に咳がひどくなる病気です。
症状は3期に分け経過していきますが、落ち着くまでに約3か月(100日)かかります。
とても長く咳が続くため、胸への負担は大きく、筋肉痛による痛みが現れやすくなります。
【参考情報】『百日咳とは』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/477-pertussis.html
3.咳で胸が痛い場合に呼吸器内科で行う検査
咳により胸が痛いときは以下のような検査を行います。
3-1.画像検査
画像検査からは肺に炎症が起きていないか、異常が見られないかを確認することができます。
炎症が起きている部分は白く写るなど、画像の特徴から病気の診断を行うことが可能です。
3-2.血液検査
血液検査では体に炎症が起きていないか、アレルギーがないかなどを確認することができます。
体の状態を幅広く調べることができるため多くの場面で行われる検査です。
3-3.呼吸機能検査
咳で胸が痛くなり、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などが原因の可能性がある時は呼吸機能検査を行います。
気道の炎症の有無や気道内の空気の通り、呼吸の機能を調べるために以下のような検査が行われます。
<おもな検査>
・呼気NO(一酸化窒素)検査:気道の炎症の有無や、その程度を調べる検査
・モストグラフ:気道の状態、どの程度息を吐き出しにくくなっているのかを調べる検査
・スパイロメトリー:肺機能を測定する検査。
4.激しい咳に、自分でできる対処法
激しい咳は胸を痛める原因にもなるため、日頃からケアができるよう、以下のような対処法をお試しください。
4-1.水分摂取
のどや気道(空気の通り道)が乾燥すると少しの刺激でも咳が出やすい状態になります。
痰も出しづらくなり咳が長引く原因にもなるため、こまめな水分補給でのどを潤しましょう。
冷たい飲み物は刺激となり咳が出やすくなるため、温かい飲み物がおすすめです。
4-2.部屋の加湿
空気が乾燥するとのどや気道(空気の通り道)も乾燥し咳が出やすくなってしまいます。
咳の悪化を防ぐために、加湿器の利用やタオルなどを干し、適正な湿度40~60%を維持するようにしましょう。
4-3.ハチミツの摂取
ハチミツには咳をやわらげる効果があるという論文や研究結果が多くあります。
夜間はとくに咳が出やすくなるため、眠る前にハチミツを摂取することで咳を軽減する効果が期待できます。
ハチミツだけ摂取することが難しい場合は、お湯に溶かして飲むことで、のども潤うのでおすすめです。
ただし、1歳未満の子どもがハチミツを摂取すると乳児ボツリヌス症にかかることがあります。熱に強い菌のため通常の加熱でも生き続ける菌です。
絶対に1歳未満の子どもにはハチミツを摂取させないようにしてください。
【参考情報】『ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html
5.おわりに
咳により胸の痛みが出る原因はさまざまですが、長引くことで心身の苦痛も大きくなります。
治療が必要な病気が潜んでいることもあるため、痛みを引き起こす原因を明確にすることも大切です。
咳で胸の痛みがつらい場合は病院を受診するようにしましょう。