喘息治療薬「アドエア」の特徴と使用時の注意点
アドエアは、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に使われる吸入薬です。毎日続けて使うことにより、喘息・COPDの症状である咳や呼吸困難を防ぎます。
この記事では、アドエアの特徴や使い方、副作用などについて解説します。使うのを忘れてしまったときの対応法や、保管上の注意点も紹介しますので、しっかり確認していきましょう。
1.アドエアの成分と特徴
アドエアには、β2刺激成分のサルメテロールキシナホ酸塩と、ステロイド成分のフルチカゾンプロピオン酸エステルが配合されています。
サルメテロールの気管支を広げる作用と、フルチカゾンプロピオン酸エステルの炎症を抑える作用によって、息苦しさを和らげます。
【参考情報】『Fluticasone and Salmeterol Oral Inhalation』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a699063.html
アドエアには、粉末を吸い込むタイプの「アドエア ディスカス」と、霧状の薬液を吸い込むタイプの「アドエア エアゾール」があります。
それぞれのメリットとデメリットを理解しておきましょう。
<アドエア ディスカス>
・メリット:薬剤を噴霧する必要がないため、好きなタイミングで吸い込むことができる
・デメリット:勢いよく吸い込む必要があるため、吸う力が弱い子どもや高齢者には吸入が難しい
<アドエア エアゾール>
・メリット:薬液を口に向かって噴霧するため、吸い込む力が弱い人でも吸入しやすい
・デメリット:薬液を噴霧するタイミングと、吸い込むタイミングを合わせる必要がある
2. アドエアの吸入方法
ディスカスとエアゾールでは、使い方が異なります。それぞれの使い方を順に見ていきましょう。
2-1.アドエア ディスカス
ディスカスは、円盤型の容器です。
①カバーを開ける
「カチッ」という音が鳴るまで、カバーをスライドさせます。
②レバーを押す
カバーをスライドさせると、吸入口(マウスピース)とレバーが出てきます。
吸入口を自分の方に向けて、容器を水平に持ち、「カチッ」という音が鳴るまでレバーをスライドさせます。
③息を吐き出し、吸入口をくわえて深く吸い込む
容器を水平に持ったまま、無理のない程度に息を吐き出します。
その後、吸入口をくわえて、息を深く一気に吸います。
④吸入口から口を離し、3〜4秒以上息を止める
勢いよく息を吸ったら、吸入口から口を離して、3〜4秒以上息を止めます。
息を止めた後は、通常の呼吸に戻ってください。
⑤カバーを閉じ、うがいをする
吸入が終わったら、カバーをしっかり閉じましょう。
吸入後は、口内に付着した薬剤の粉末を洗い流すため、のどを洗うガラガラうがいと、口の中をゆすぐクチュクチュうがいをしてください。
2-2.アドエア エアゾール
エアゾールは、L字型の容器です。
①キャップを開けて振る
キャップをつまんで開け、容器をよく振りましょう。
②息を吐き出し、薬液を吸う準備をする
息を無理なく吐き出したら、舌を下げてのどを広げます。
③ゆっくり息を吸いながら、ボンベを強く押す
吸入口を軽くくわえるか、4cm程度口から離した状態で、ゆっくり息を吸い込みます。
息を吸い込みながら、ボンベを強く1回押しましょう。
④吸入口から口を離し、3〜4秒以上息を止める
息を吸ったら、吸入口から口を離して3〜4秒以上息を止めます。
息を止めた後は、通常の呼吸に戻ってください。
※医師の指示により、もう一度吸入する場合は、①〜④を繰り返しましょう。
⑤キャップを付けてうがいをする
吸入が終わったら、容器にキャップを付けましょう。
また、吸入後は口内に付着した薬液を洗い流すために、のどを洗うガラガラうがいと、口をゆすぐクチュクチュうがいをしてください。
3.アドエアの副作用と防ぎ方
アドエアの主な副作用は、以下の通りです。
・口腔カンジダ症:口の中にカビが発生して白くなる
・嗄声(させい):声がかすれる
・口やのどの不快感
・筋肉のつり
・動悸
・ふるえ
筋肉のつりや動悸、ふるえは、ひんぱんに起こるようなら医師や薬剤師に相談しましょう。
また、めったにありませんが、アナフィラキシー症状や血清カリウム値低下などの重篤な副作用が起こる場合があります。
以下のような症状が現れた場合は、すぐに病院を受診してください。
・冷汗
・顔面蒼白(そうはく)
・手足の冷え
・意識の消失
・じんましん
・のどのかゆみ
・息苦しさ
・脱力感
アドエアは、正しく使えば全身に副作用が起こることは非常に少ない薬です。
多くの副作用は、口やのどに起こりますが、吸入後にガラガラ・クチュクチュうがいをすることにより防ぐことができます。
ガラガラうがいが難しい場合は、水を口の中でクチュクチュさせて、そのまま飲み込んでも問題ありません。
吸入後は、口の中にアドエアの成分が残らないように水で洗い流すことが、副作用を防ぐために大切です。
【参考情報】『治療 ぜん息の薬|成人ぜん息(ぜんそく、喘息)』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html
4.アドエアを使うときの注意点
アドエアは、続けて使うことで徐々に効果が現れる薬なので、毎日決められた回数を吸入してください。
喘息の発作時に吸入しても効果は得られません。発作が起きた場合は、発作治療薬(リリーバー)を使用してください。
また、一度に2回分を吸入すると、副作用が起こる原因となります。万が一吸入を忘れてしまった場合は、次のタイミングから通常通りの量を吸入しましょう。
アドエアは湿気に弱い薬です。容器を掃除する際は、吸入口を乾いたティッシュで拭くだけで十分です。分解して水で洗ったり、湿ったティッシュや布で拭いたりしないように気をつけましょう。
また、直射日光や湿気をさけ、涼しいところに保管してください。
アドエアは、生後8か月以上から処方可能な薬ですが、小さいお子さんがひとりで服用するのは難しいです。服用の際は、保護者の方がサポートしてください。
小さな子どもがエアゾールを使う場合、薬液噴霧と吸い込む際のタイミングを合わせる必要のない「スペーサー」という吸入補助器を使うこともできます。
妊娠中の方・授乳中の方・治療中の持病がある方は、使用前に医師に相談しましょう。
5.アドエアの薬価
アドエア1つあたりの価格(薬価)は次のとおりです。
・アドエア100ディスカス28吸入用 2920.2円/キット
・アドエア100ディスカス60吸入用 6059.8円/キット
・アドエア250ディスカス28吸入用 3360.9円/キット
・アドエア250ディスカス60吸入用 6977.4円/キット
・アドエア500ディスカス28吸入用 3741.9円/キット
・アドエア500ディスカス60吸入用 7878.4円/キット
・アドエア50エアゾール120吸入用 6395.4円/瓶
・アドエア125エアゾール120吸入用 7502.9円/瓶
・アドエア250エアゾール120吸入用 8455.1円/瓶
アドエアには、代わりになるようなジェネリック医薬品や市販薬はありません。
喘息やCOPDの症状は、市販薬では緩和されません。市販の咳止め薬を服用すると、かえって症状が悪化することもあります。
◆「アレルギー性の咳は市販薬を使用していいの?」について>>
6.おわりに
アドエアと同じような、β2刺激成分とステロイド成分を配合した吸入薬には、「シムビコート」「フルティフォーム」「レルベア」があります。
アドエアを使ってみても、効果が感じられなかったり、自分に合わないと感じたりした場合は、薬を変えてもらえるかどうか、主治医に相談してみましょう。
アドエアは、喘息の発作を予防するために毎日使う薬です。医師からの指示や使い方をよく守り、毎日コツコツ使いましょう。