喘息治療薬「ベネトリン」の効果・効能・副作用

ベネトリンは、喘息や小児喘息の治療に用いられる薬剤で、吸入液とシロップがあります。いずれも、喘息の発作が起こったときに使います。

以前は、ベネトリンの錠剤も販売されていましたが、2021年3月31日に販売中止となりました。

本記事では、ベネトリンがどのような薬なのか、効果や使用方法、副作用などについて解説します。

喘息の治療でベネトリンを使用する方は、ぜひ参考にしてください。

1.ベネトリンとはどのような薬か

ベネトリンは、「サルブタモール硫酸塩」を有効成分とする薬剤です。有効成分のサルブタモール塩酸塩は、短時間作用型β2刺激薬(SABA)に分類されています。

【参考情報】『Salbutamol inhaler』National Health Service

SABAには、気管支にある交感神経のβ受容体に作用して、気管支を広げ呼吸を楽にする効果があります。

喘息や気管支炎の患者さんは、炎症により気管支が狭くなっています。そのため、咳や息苦しさなどの症状が現れます。

ベネトリンは、狭くなった気管支を広げ、気道の通りを良くすることで、咳や息苦しさを改善します。

服用後約5〜10分と、短時間のうちに効果が期待できるため、発作など強い症状が出た直後に使用するのが望ましいです。

現在、販売・使用されているのは、吸入液の「ベネトリン吸入液0.5%」とシロップの「ベネトリンシロップ0.04%」の2種類です。

吸入液は、主に小児〜成人の喘息のほか、急性/慢性気管支炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核の治療にも用いられます。ネブライザーという機器を使用して、鼻から吸入します。

シロップ剤は、ストロベリー味の甘い溶液で、そのまま飲むことができます。主に乳児〜5歳未満の小児に処方されます

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2.ベネトリンの使い方

ベネトリンは、吸入液とシロップで服用方法が異なります。

2-1.吸入液

吸入液は、「ネブライザー」を使用して吸入します。ネブライザーは複数の種類がありますが、ここでは医療機関だけではなく家庭でも使用されることが多い「コンプレッサー式ネブライザー」での吸入方法を説明します。

1.吸入の準備をする

本体の電源が入っているか、必要な器具がそろっており組み立てられているかを確認してください。

2.薬液をボトルに入れる

処方された用量を守り、スポイトで薬液を専用ボトルに入れます。成人は1回0.3〜0.5mL、小児は1回0.1〜0.3mLです。服用量が適正かどうか、必ず確認してください。

3.吸入する

溶液ボトル、吸入マスク、送気ホースをつなげ、本体の電源を入れると吸入が可能になります。

薬液は、吸入マスクから霧状に噴射されます。吸入マスクを口に(または鼻まで)当て、噴射が終わるまで深呼吸をしながら吸入してください。

【参考情報】『コンプレッサー式ネブライザー』OMURON

2-2.シロップ

シロップ剤は、そのまま直接飲んで服用してください。基本的に、乳幼児は体重で、1歳~5歳未満の小児へは年齢で医師が用量を決定しますので、決められた量を守ってください。

原液のままでは飲みにくい場合は、「水で薄める」「冷やす」「ジュースなどに混ぜる」と飲みやすくなります。

ただし、混ぜるものによっては、有効成分の効果に影響が出る可能性もありますので、事前に医師や薬剤師に相談してください。

3.ベネトリンの副作用

主な副作用は以下となります。吸入液もシロップも有効成分が同じであるため、副作用は同じです。

・心悸亢進(動悸、心臓がドキドキと早く鼓動しているように感じる)
・不整脈
・頭痛
・手の震え
・めまい
・吐き気

また、ごく稀ではありますが、以下のような重篤な副作用もあります。

・血清カリウム値低下
・アナフィラキシーショック

副作用の多くは、発現後数分〜10分程度で治まります。ただし、それ以上続く場合や、不快感が強い場合、耐えられないと感じた場合は、医療機関に連絡してください。

服用後に少しでも異常が見られ、耐えられない症状だと感じた場合は、直ちに医療機関を受診してください。

4.使用上の注意点

ベネトリンは、喘息の発作など、急性期の症状が出たときのために処方される薬剤です。症状が出たら、できるだけ早めに吸入し、悪化を防ぎましょう。

ただ、服用後もなかなか症状が治まらずにいると、効いていないのではないかと不安になって、過剰に服用してしまう方もいます。

医師の指示する量を超えて服用してしまうと、副作用の危険性が高まる恐れがあります。必ず決められた量の中で服用し、それでも症状が改善しない場合は医療機関に連絡しましょう。

妊娠中の方や、小さいお子さんが服用する場合、体への影響を気にして、薬に抵抗感を持つかもしれません。

しかし、喘息発作を放置してしまうと、発達が十分でない胎児や小児の体に危険が及ぶ恐れがあります。

治療の必要があると診断された場合は、医師の指示なしに服用を避けることは、絶対にしないでください。

吸入液もシロップも、直射日光の当たらない涼しい場所で保管しましょう。暑い時期は、冷蔵庫で保管するとよいでしょう。

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5.ベネトリンの薬価

ベネトリンの薬価を以下にまとめました。吸入液とシロップでは薬価が異なります。

・ベネトリン吸入液0.5% 18.4円/mL
・ベネトリンシロップ0.04% 5.6円/mL

ベネトリンの代わりに使えるジェネリック医薬品や市販薬はありません。

6.おわりに

ベネトリンが合わない、副作用がつらいなどと感じる方は、ベネトリンと同じ短時間作用型β2刺激薬(SABA)に分類される別の薬が使えるかどうか、医師に相談してみてください。

以下は、短時間作用型β2刺激薬(SABA)に分類される薬剤の一覧です。

商品名有効成分剤形
サルブタモールサルブタモール塩酸塩錠剤
サルタノールサルブタモール塩酸塩吸入エアゾール
メプチンプロカテロール塩酸塩水和物錠剤、シロップ剤、エアゾール剤、ドライパウダー剤、吸入用液剤、シロップ用粉末剤
ベロテックフェノテロール臭化水素酸塩吸入エアゾール剤
フェノテロールフェノテロール臭化水素酸塩シロップ用粉末剤

喘息の治療薬には、毎日使用する「長期管理薬(コントローラ)」と、発作が起こったときに使用する短期治療薬(リリーバー)があります。ベネトリンは、短期治療薬にあたります。

症状を改善するためには、長期管理薬を毎日服用する必要があります。発作が起こったときだけ発作治療薬を使うのではなく、長期管理薬の服薬も忘れずに続けましょう。

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