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喘息とアレルギーの関係とは?夜間の咳が悪化する原因と効果的な対処法

気管支喘息は、アレルギー反応を含む慢性的な気道炎症によって引き起こされる呼吸器疾患です。

日本では成人の約400万人がこの疾患に悩んでいます。

「夜になると急に咳が止まらなくなって眠れない…」

「日中は平気なのに、寝る時間になると息苦しくなる…」

そんな経験はありませんか?

この記事では、喘息とアレルギーの関係から夜間症状のメカニズム、具体的な対処法までをわかりやすく解説します。

1.喘息とアレルギーの基本知識と症状の特徴


気管支喘息は現代社会で多くの方が悩む慢性的な呼吸器疾患です。

この章では、喘息とアレルギーの関係、症状について解説していきます。

1-1. 喘息とアレルギーの関係

気管支喘息とは、気道に慢性的な炎症が生じ、様々な刺激に対して気道が過敏に反応することで起こる疾患です。

この炎症により気道が狭くなり、わずかな刺激でも咳や喘息発作が起こりやすくなるのが特徴です。

◆「喘息とはどんな病気?原因と症状を解説します」>>

【参考情報】『気管支ぜんそく』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html

2024年の最新ガイドラインでは、喘息の分類が大きく見直され、従来の「アトピー型・非アトピー型」という分類から、「T2-high(高タイプ2)喘息」と「T2-low(低タイプ2)喘息」という新しい分類に変更されました。

「T2-high(高タイプ2)喘息」では以下の特徴が見られます。

好酸球数の増加:アレルギー反応を起こす白血球の一種である好酸球が、正常値(100~400個/μL)より多くなる

特異的IgE抗体の上昇:ダニ、花粉、カビなど特定のアレルゲン(アレルギーの原因物質)に反応する抗体が血液中で増加している

FeNO高値:気道の炎症を示す一酸化窒素が高い

「T2-low喘息」では、上記の好酸球数や特異的IgE抗体は正常範囲内にとどまることが多いのが特徴ですが、アレルギーと関係がないということではなく、別の種類の炎症メカニズムが関与しています。

「T2-low喘息」では以下の特徴が見られます。

・吸入ステロイド薬が効きにくいことが多い

・中高年での発症が多い

・肥満、喫煙歴、感染症との関連が強い

・呼吸機能の低下が速い傾向がある

この分類により、患者さん一人ひとりのアレルギー体質や病態に応じた、より効果的な治療選択が可能になりました。

1-2. 主な症状と特徴

気管支喘息の代表的な症状は乾いた咳で、特に夜間から早朝にかけて悪化しやすい点が特徴です。

また、呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)が聞こえることがあり、これは気道が狭くなって空気が通りにくくなっているサインです。

息苦しさ胸の圧迫感もよく見られます。

軽い場合は違和感程度ですが、重症化すると日常生活に支障をきたすこともあります。

これらの症状には次のような特徴があります。

・発作的に現れ、良くなったり悪くなったりを繰り返す

・夜間から早朝(午前2~6時)に悪化しやすい

・季節の変わり目や天候の変化で症状が強くなる

・発熱を伴わないことが多い

・特定のアレルゲンに触れた後に症状が出現する

・他のアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎など)を併発することがある

◆「咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません」>>

1-3. 重症度分類と早期治療の重要性

気管支喘息の重症度は症状の頻度や強さによって「軽症間欠型」から「重症持続型」まで4段階に分類されます。

アレルギー反応の強さや関与するアレルゲンの種類によっても症状の程度は変わります。

重症度分類は治療方針の目安です。

軽症でも放置すると気道リモデリング(気道の不可逆的構造変化)が進み、治療が難しくなる恐れがあります。

そのため症状が軽いうちから治療を始め、将来にわたりコントロールすることが重要です。

【参考情報】”What Is Asthma?” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma

2.なぜ夜間に症状が悪化するのか?


日中は平気でも、夜になると症状が悪化する。

多くの患者さんが経験するこの現象には、生体リズムや環境要因が深く関係しています。

夜間に咳や喘息症状が出やすくなるのは、偶然ではなく明確な医学的理由があるのです。

2-1. 自律神経の影響

私たちの体は昼と夜で自律神経の働きが変化し、これがアレルギー反応にも影響します。

昼間は交感神経が優位で気管支が拡張しますが、夜間は副交感神経が優位となり、リラックスする代わりに気管支は収縮しがちです。

アレルギー性喘息の患者さんでは慢性的な炎症で気道が敏感になっているため、夜間はさらに気道が狭まり、わずかな刺激でも咳や呼吸困難が起きやすくなります。

◆「朝の咳と夜の咳の違いについて」>>

2-2. ホルモン分泌のリズム

体内のホルモン分泌は24時間周期で変動しています。

夜間は抗炎症作用をもつコルチゾールの分泌が低下し、気管支拡張を助けるアドレナリンも減少します。

その一方で気道を収縮させるヒスタミンは夜から明け方にかけて増えるため、気道炎症が起こりやすく過敏になります。

2-3. 睡眠環境とアレルゲン

夜間は体温が1~2℃下がり、それにつれて気道粘膜も冷えるため刺激に敏感になります。

また仰向けで寝ると鼻水や痰が喉に流れ込み(後鼻漏)、咳が出やすくなります。

寝室環境に潜むダニの死骸・フンやカビの胞子も一因です。

就寝中の動きでそれらが舞い上がり、長時間空気中を漂って気道を刺激します。

【参考情報】『咳嗽の病態と治療』日本内科学会雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/96/9/96_1953/_pdf

【参考情報】”Asthma — Treatment and Action Plan” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma/treatment-action-plan

3.喘息を引き起こすアレルゲンと喘息を悪化させるアレルゲンと環境要因


喘息の発症や悪化につながるアレルゲンは、日常生活環境の中に数多く存在します。

何が原因になり得るのか正しく理解し、適切に対策することが症状改善への大切なステップです。

3-1. 室内の主なアレルゲン

ダニ・・・現代の住環境で特に問題となるのがダニとハウスダストです。
ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニなどのダニは日本の住宅に広く生息しており、その死骸やフンが微細なハウスダストとして空気中に漂います。
掃除機をかけたり布団を動かすだけで容易に舞い上がり、長時間浮遊するため吸い込むと気道を刺激します。

カビ・・・浴室や台所、結露しやすい窓際など湿度の高い場所に繁殖し、目に見えない胞子を空気中に放出します。それらを吸い込むことでもアレルギー反応が引き起こされます。

ペット・・・ペットを飼っている場合、犬や猫の毛やフケ、唾液、尿に含まれるタンパク質も強力なアレルゲンです。微細で軽いためペットがいない部屋まで広がりやすく、完全に除去するのは容易ではありません。

◆「喘息などアレルギー症状の引き金となるカビ、掃除で注意すべきポイント」>>

3-2. 屋外のアレルゲンと大気汚染

屋外のアレルゲンで代表的なのは花粉です。

春のスギ・ヒノキ、夏のイネ科、秋のブタクサなど季節ごとにさまざまな花粉が飛散します。

花粉は風に乗って遠方まで運ばれ、都市部にも大量に飛来するため注意が必要です。

大気汚染物質も見逃せません。

PM2.5や光化学オキシダント、ディーゼル排気などは直接のアレルゲンではないものの、気道を刺激してアレルギー反応を強めます。

3-3. 食物アレルゲンと生活因子

乳幼児・小児では食物アレルギーが喘息発作の誘因となる場合があります。

例)卵、牛乳、小麦、エビ・カニ、そば、ピーナッツなど。

また花粉症の人が特定の果物や野菜を食べると口や喉がかゆくなる口腔アレルギー症候群(OAS)を起こすことがあり、まれに気道症状まで発展します。

・スギ花粉 → トマト
・シラカンバ花粉 → リンゴ、桃
・ブタクサ花粉 → メロン、スイカ

タバコの煙、香水・芳香剤、冷たい空気や急な温度変化、激しい運動、ストレスなどの非特異的な刺激も発作を誘発・悪化させる要因です。

◆「喘息を悪化させる要因」>>

【参考情報】『日常生活におけるぜん息悪化の要因』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/causes.html

【参考情報】”Asthma Triggers: Gain Control” by U.S. Environmental Protection Agency
https://www.epa.gov/asthma/asthma-triggers-gain-control?utm_source=chatgpt.com

4.夜間症状を和らげるための具体的な対処法


夜間の症状を軽減するには、睡眠環境の整備から日常的なケアまで総合的な対策が必要です。

ここでは対処法を解説します。

4-1. 寝るときの姿勢を工夫する

睡眠時の姿勢は症状の出方に影響します。

上半身をやや高くして寝ると気道が確保されやすくなり、鼻水や痰が喉に流れ込むのを防げます。

枕を2~3個重ねたり、背中にクッションを入れて上体を15~30度起こすとよいでしょう。

仰向けより横向きに寝るほうが舌の沈下による気道閉塞を防げます。

抱き枕を使えば姿勢を保ちやすく、呼吸もより楽になるでしょう。

◆「咳がつらい時の寝姿勢|うつ伏せ・仰向け・横向きのどれがいい?」>>

4-2. 寝室の環境を整える

寝室の温度と湿度を適切に管理することで夜間症状の悪化を防げます。

室温は18~22℃、湿度は40~60%に保つのが理想です。

加湿器は衛生面からスチーム式を使うと安心でしょう。

空気清浄機(HEPAフィルター付き)を使用してハウスダストやカビ胞子、花粉などの微粒子を除去するのも効果的です。

また、就寝前に換気を行って新鮮な空気を取り入れましょう(花粉の季節は飛散量が少ない夜間に換気すると安全です)。

根本的にアレルゲンを減らすには次の対策が有効です。

・防ダニ加工の寝具を使用する

・布団やシーツは週1回以上、60℃以上の熱湯で洗濯する

・カーペットや畳はダニの温床となるので極力避け、フローリングに替える

・ぬいぐるみ等ホコリをかぶりやすい物は寝室に置かない

4-3. 水分補給とのどのケア

寝る前にコップ1杯の常温の水を飲んでおくと、寝ている間の気道粘膜の乾燥を防げます。

枕元にも水を用意し、夜中に咳き込んだ際に喉を潤せるようにしましょう。

冷たい飲み物は刺激になる場合があるため、常温か温かい飲み物を選ぶのがおすすめです。

首元を温めて喉を保護することも大切です。

ネックウォーマーなどを使用すると気道周辺の血流が良くなり、粘膜の状態が安定します。

カモミールティー白湯など温かい飲み物は喉を潤すと同時にリラックス効果もあります。

就寝時にマスクを着けるのも有効です。

吸い込む空気が温められ加湿されるため気道への刺激が和らぎます。

特に口呼吸になりがちな方は喉の乾燥防止に役立ちます。

4-4. 正しい呼吸法とリラクゼーション

呼吸法を工夫することで症状の軽減や発作の予防につながります。

腹式呼吸(鼻からゆっくり息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめてゆっくり息を吐く)を行うと気道が安定し、不安感も和らぎます。

寝る前に軽いストレッチ瞑想を取り入れるのも効果的です。

特に肩や首まわりの筋肉をほぐすと呼吸がしやすくなります。

また、ラベンダーやユーカリなどのアロマの香りは呼吸を楽にする手助けになります。

◆「咳が止まらず眠れない。どうすればいい?」>>

【参考情報】『発作が起こったら…』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/attack.html

【参考情報】『喘息予防・管理ガイドライン2021』日本アレルギー学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/72/3/72_214/_article/-char/ja/

【参考情報】”Reduce Asthma Triggers” by American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/managing-asthma/reduce-asthma-triggers

5.喘息の診断・治療


適切な診断により喘息のタイプを特定し、アレルギー反応に応じた治療を行うことで、症状を効果的にコントロールできます。

5-1. 診断方法

診断の際には、医師による詳しい問診に加え、いくつかの検査が行われます。

主な検査には次のようなものがあります:

問診(医師による聞き取り): 症状がいつどのように出るか、季節や環境との関係、家族歴などを詳しく確認します。

血液検査: アレルギーに関与するIgE抗体や、アレルギーの際に増える好酸球(白血球の一種)の数を測定します。

呼吸機能検査: スパイロメトリー(肺活量検査)やピークフローメーターによる検査で、息を吐く力など肺の機能を調べて気道の状態を評価します。

アレルギー皮膚テスト: ダニや花粉などのアレルゲン(アレルギーの原因物質)を少量皮膚につけて反応を見る検査で、喘息の原因となるアレルゲンを特定します。

必要に応じて胸部レントゲン検査など他の検査を行い、喘息以外の病気が隠れていないか確認することもあります。

これらの情報を総合して、喘息の診断をしていきます。

5-2. アレルギータイプに応じた治療法

治療の基本は、気道の慢性的な炎症を抑える「吸入ステロイド薬(フルチカゾン、ブデソニドなど)」の毎日使用です。

ステロイドの吸入薬は抗炎症作用が強く、喘息のどの重症度でもまず土台となる薬です。

ステロイドと聞くと、副作用を心配される方もいますが、適切に使用すれば問題ありませんので、ご安心下さい。

また、症状が出て息苦しいときには、気管支を拡げる作用のある吸入薬(短時間作用型のβ2刺激薬・メプチンエアーやサルタノールなど)を使って速やかに症状を和らげます。

◆「メプチンエアー」の特徴や副作用について解説!>>

◆「サルタノール」の特徴や副作用について解説!>>

それでも症状が十分に抑えられない場合には、追加の治療を検討します。

例えば、飲み薬の抗アレルギー薬(シングレアやキプレスなど)を併用したり、「アドエア」や「レルベア」などの配合剤(吸入ステロイド薬と長時間作用型β2刺激薬の組み合わせ)を使用したりします。

◆「アドエア」の特徴と使用時の注意>>

特定のアレルゲンが喘息発作の原因となっている場合には、その原因に対する免疫療法(例:ダニに対する舌下免疫療法)を行うこともあります。

さらに、症状が重い難治性のケースでは、抗IgE抗体(オマリズマブ)などの生物学的製剤による新しい治療法が導入されています。

これらはアレルギー反応そのものを抑えるお薬で、重症のアレルギー性喘息の方に用いられます。

【参考情報】『ぜん息外来.jp』アストラゼネカ株式会社
https://www.539zensoku.jp/severe/

【参考情報】『治療』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/cure.html

【参考情報】”Is Your Asthma Allergic?” by American Academy of Allergy, Asthma & Immunology
https://www.aaaai.org/tools-for-the-public/conditions-library/asthma/is-your-asthma-allergic

6.まとめ

喘息とアレルギーは密接に関係しており、日々新しい診断・治療法が確立されています。

喘息の管理では、薬による治療とともに生活環境の改善や健康的な習慣づくりも欠かせません。

現在では血液検査によるアレルゲンの特定や、生物学的製剤による根本的なアレルギー反応の抑制、さらにはアレルゲン免疫療法による体質改善まで、様々な治療選択肢があります。

少しでも気になる症状がある場合には、早めにアレルギー専門医や呼吸器内科を受診し、適切なアレルギー検査と治療により、「臨床的寛解」という理想的な状態を目指しましょう。

【参考情報】”About Asthma” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma/about/index.html?utm_source=chatgpt.com