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咳が止まらない…喘息治療薬が効かないと感じるときに考えられる原因

風邪でもないのに「咳が止まらない…」と悩んでいませんか?

病院で咳喘息や気管支喘息と診断され、吸入薬などの薬を飲んでいるのに咳が続くと、「薬が効いていないのでは?」と不安になりますよね。

自己判断で薬の使用を中断・変更してしまう前に、まずは喘息治療薬の効果の出方や改善までにかかる時間を正しく理解しましょう。

本記事では、薬を服用しているのに咳が止まらない理由とその対策について詳しく解説します。

1. 薬を飲んでいるのに咳が止まらないのはなぜ?


咳喘息や気管支喘息と診断されると、一般的に吸入ステロイド薬(炎症を抑える薬)や気管支拡張薬(気道を広げる薬)などが処方されます。

これらはいずれも喘息症状をコントロールするための重要な薬ですが、市販の咳止め薬とは作用の仕方が異なります。

市販の鎮咳薬は咳そのものの神経反射を一時的に抑えるのに対し、喘息治療薬は気道の炎症を鎮めたり気道を広げたりすることで咳の出にくい状態を作る薬です。

そのため喘息治療薬は、服薬してすぐに咳がピタッと止まるわけではなく、薬が少しずつ効果を発揮している可能性があります。

喘息の薬は症状を根本から改善するためのものであり、風邪薬のような即効性はないことを覚えておきましょう。

◆『咳喘息の症状とは?喘息との違いについても解説します』>>

◆『その咳は放っておいて大丈夫?呼吸器内科を受診する目安を紹介します』>>

【参考情報】”Inhaled corticosteroids are the preferred controller medication” by National Asthma Education and Prevention Program (NAEPP)
https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2010/1115/p1242.html

1-1. 処方される主な喘息の薬

喘息治療で処方される代表的な薬には、大きく分けて「長期管理薬」と「発作治療薬」の2種類があります。

長期管理薬は毎日継続して使用して気道の炎症を抑える薬で、吸入ステロイド薬(例:フルタイド、オルベスコなど)と長時間作用性の気管支拡張薬に分類されます。

発作治療薬(リリーバー)は喘息発作時に頓用する短時間作用性の気管支拡張薬が中心で、数分で効果を発揮し呼吸を楽にします。

発作治療薬はあくまで一時的に症状を和らげるもので、炎症そのものを治療する効果はありません。

長期管理薬である吸入ステロイド薬を毎日使い、発作を未然に防ぐことが喘息治療の基本となります。

◆『喘息の治療で使われる「吸入薬」について』>>

◆『喘息治療で使われる「オルベスコ」の特徴や副作用について解説!』>>

◆『喘息治療で使われる「フルタイド」の特徴や副作用について解説!』>>

【参考情報】『ぜん息の薬』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html

【参考情報】”Inhaled corticosteroids for persistent asthma” by Global Initiative for Asthma
https://ginasthma.org/wp-content/uploads/2023/07/GINA-2023-Pocket-Guide-WMS.pdf

1-2. 吸入ステロイド薬と気管支拡張薬の効果の違い

吸入ステロイド薬は気道の慢性的な炎症を鎮めて咳や喘息発作を起こりにくくする薬です。

炎症という根本原因に作用するため、吸入ステロイド薬は、効果が出始めるまでに数日~1週間程度かかるのが一般的です。

焦らず継続することで徐々に気道の炎症が治まり、咳も和らいできます。

一方、気管支拡張薬は気道の筋肉を弛緩させて気管支を広げる薬で、吸入後すぐ(数分以内)に呼吸を楽にする効果が期待できます。

ただし効果の持続時間は気管支拡張薬の種類によって異なり、短時間作用型では数時間、長時間作用型では12~24時間程度です。

しかし、気管支拡張薬では根本の炎症は治せないため、それだけに頼っていると炎症が残ったままになり症状がぶり返す恐れがあります。

このように「発作を防ぐ薬」と「発作を止める薬」では役割が異なるので、処方された薬の種類に応じて効果の現れ方も違うことを理解しておきましょう。

【参考情報】『長時間作用性刺激薬β2刺激薬』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/glossary/kw60.html

【参考情報】”Bronchodilator or Steroid Inhaler: Which Should Be Used First?” by NIH-affiliated resource (Verywell Health summary of guidelines)
https://www.verywellhealth.com/bronchodilator-or-steroid-inhaler-3970974

2. 吸入ステロイド薬の効果が出るまでの目安


喘息治療薬、とくに吸入ステロイド薬は決められた用法用量で継続的に使用することが重要です。

吸入ステロイド薬は。使い始めて3日~1週間ほどで徐々に咳などの症状が軽減し始めるのが一般的です。

しかし、症状が楽になったからといって勝手に薬をやめてしまうと、薬の効果はすぐに薄れてしまいます。

長期間毎日使うことで初めて本当の効果が得られる薬なので、自己判断で中断せず医師の指示通りに一定期間は続けることが大切です。

では、具体的にどのくらい続ければ改善が見られるのでしょうか。

咳喘息の場合では、症状がでなくなっても再発の可能性があるため、3~6か月は治療を継続する必要があります。

治療の中止に明確な基準はなかったものの、最近では「臨床的緩解(症状がほとんどなく、悪化せず症状が安定した状態)」という到達目標が示されています。

一般的に、小児の場合は3か月以上、成人の場合は3~6か月以上症状がコントロール出来ていると減薬することが考えられ、最小量の薬でコントロール出来れば中止を試みることがあります。

いずれにしても、症状が出なくなったからといって数日のうちに薬を中止すると、再び咳がぶり返したり、咳喘息の場合は本格的な気管支喘息へ移行するリスクがあります。

医師から「治療終了」と言われるまでは油断せず指示通り服薬を続けましょう。

なお、2~4週間ほど使ってみても全く症状の改善が見られない場合は、診断が誤っていたり薬以外の原因で咳が続いている可能性もありますので、早めに主治医に相談し、薬の調整や追加検査を受けることをおすすめします。

◆『長引く咳で疑われる疾患について』>>

【参考情報】『吸入ステロイド薬をはじめとする長期管理薬は、いつまで続けなければならないのですか。』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/50/feature/feature02.html

【参考情報】”Inhaled corticosteroids do not provide immediate relief; benefits seen after 3–4 weeks” by NIH (e.g., NCBI / NIH summaries)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK470556/

2-1. 毎日の服薬を続けることが症状改善の近道

「発作が起きたときだけ薬を使えばいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、喘息は症状がないときでも気道の炎症が続いている病気です。

症状が軽減していても自己判断で薬を減らしたり中止したりしてはいけません。

日々の吸入ステロイド薬など長期管理薬の継続使用によって気道の炎症を十分に抑え込んでおくことが、咳を根本から止める近道なのです。

服薬を続けるのは時に面倒に感じるかもしれませんが、毎日の服薬を怠り発作時だけ薬を使うような状態が続くと、気道の炎症が慢性化して気管支の構造そのものが変化してしまう「気道リモデリング」が起こる可能性があります。

一度気道が硬く厚く変化してしまうと元に戻らず、治療が難しくなってしまいます。

また、日頃の管理不足は重篤な喘息発作の一因ともなります。

こうしたリスクを防ぐためにも、症状がなくても指示どおりに薬を継続し、定期通院して経過をチェックしましょう。

◆『喘息とはどんな病気?原因と症状を解説します』>>

3. 薬が効いていないと感じるときに考えられること


薬を真面目に使っているのに「やっぱり咳が治まらない…」と感じるとき、必ずしも「薬が合っていない」「効かない薬を飲まされている」というわけではありません。

ここからは、薬が効いていないように思える主な原因を紹介します。

3-1. 吸入方法・服用方法の問題

まず疑いたいのが、薬の使い方が正しくない場合です。

吸入ステロイド薬の場合、吸入器の使い方に不慣れで薬剤がしっかり肺まで届いていないと十分な効果が得られません。

処方時に医師や薬剤師から正しい吸入手順の指導があったと思いますが、自己流になっていないか今一度確認しましょう。

正しい吸入手技を身につけることが薬の効果を最大限に引き出すポイントです。

薬局でデモンストレーション用の吸入器を使って指導を受けることもできます。

また、経口薬(飲み薬)を併用している場合、飲み忘れや飲み方の間違いがないかも確認しましょう。

例えば1日2回朝夕の薬をうっかり1回しか飲んでいない、食後服用を空腹時に飲んでしまった…など些細なミスが積み重なると、治療効果が十分に発揮されません。

特に忙しい日々の中では服薬管理が難しいこともありますが、ピルケースや服薬アラーム等を活用して決められたとおりに飲み続ける工夫をすることが大切です。

【参考情報】”Inhaler skills and adherence are critical; use of spacers increases lung deposition” by NAEPP via AAFP summary
https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2010/1115/p1242.html

3-2. 症状悪化の誘因(トリガー)がある

薬の効果で炎症が抑えられていても、周囲の環境や体調次第では咳が出やすくなることがあります。

例えば、花粉シーズンやハウスダストの多い環境に長くいるとアレルギー反応で咳込みやすくなりますし、天候の変化や寒暖差も気道を刺激して症状を悪化させる一因です。

また、風邪などの呼吸器感染症にかかると、一時的に咳がひどくなることもあります。

こうした「咳の要因」があると薬を使っていても完全に咳を抑え込むのは難しいため、できる範囲で避ける努力が必要です。

部屋のこまめな換気・加湿、マスクの着用、禁煙や喫煙者と同席しない、といった対策を併せて行いましょう。

◆『咳が止まらない!つらいときに自分でできる対策を紹介します』>>

◆『咳が止まらず眠れない。どうすればいい?』>>

【参考情報】”Avoiding triggers such as allergens and irritants is key to asthma control” by NIH
https://medlineplus.gov/asthmainchildren.html

3-3. 病気自体または治療計画の見直しが必要なケース

一定期間きちんと薬を使っても改善が見られない場合、喘息(咳喘息)ではなく、別の病気が隠れていないかを確認する必要があるかもしれません。

実際、長引く咳の原因には肺の感染症(マイコプラズマ肺炎など)やアトピー咳嗽、COPDによる咳など様々な可能性があります。

これらの場合は喘息の薬では十分効果が出ないため、専門医による追加検査や別の治療が必要です。

◆『咳が2週間以上続いてる…風邪じゃない?』>>

◆『喘息と間違いやすい病気』>>

また、同じ喘息の中でも症状の程度には個人差があり、場合によっては薬の種類や量を調整する必要もあります。

例えば吸入ステロイド薬だけで咳が残るときには用量を増やしたり、ロイコトリエン受容体拮抗薬(アレルギーによる気道収縮を防ぐ飲み薬)を併用したりするケースがあります。

いずれにせよ、専門医が患者さんの状態に合わせて適切に治療ステップを調整してくれますので、症状が改善しないからといって自己判断で市販薬を追加したり、他人の薬を試したりするのは絶対にやめましょう。

◆『咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません』>>

【参考情報】『症状がなくなったので、薬をやめてもいいでしょうか。』東京都アレルギー情報navi.
https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/faq/asthma_adults.html#Q4

【参考情報】”Patients with non-Type-2 (non-eosinophilic) asthma do not respond well to inhaled corticosteroids” by American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/learn-about-asthma/types/severe-asthma

4. 副作用が心配なときは?薬を変更・中止する際のポイント


喘息治療薬を長期間使っていると、副作用の心配も出てくるかもしれません。

とくに「ステロイド」という言葉に敏感な方は、「ずっと吸入し続けて副作用は大丈夫かな」と不安になるでしょう。

しかし、吸入ステロイド薬は内服のステロイドと異なり、ごく少量で気管支に直接作用するため、全身への影響が少なく、安全に長期使用できる薬です。

実際、吸入ステロイド薬が普及してから喘息による死亡者数は大幅に減少した経緯があり、今や喘息治療の基本となるほどその有効性と安全性が認められています。

とはいえ、吸入薬特有の局所的な副作用が出ることはあります。

具体的には、のどの違和感や声がれ、口内のカンジダ感染(白いカビのようなものが生える)が報告されています。

これらは吸入した薬剤の一部が口腔や喉に残ることが原因で起こる副作用で、吸入後に毎回しっかりうがいをして口腔内に残った薬を洗い流すことで対策できます。

できればブクブクうがい(口すすぎ)とガラガラうがい(喉うがい)をそれぞれ複数回行うと理想的です。

うがいが難しい場面では、水を飲むだけでも薬剤を流すのに有効です。

これらの対策で副作用のリスクをかなりリスクを減らせますので実践しましょう。

それでも「声がかすれる」などの症状が出る場合がありますが、多くは吸入ステロイド薬の量を調整することで改善可能です。

もし、少しでも異変を感じたら勝手にやめるのではなく、その症状を主治医に伝えて対処法を相談しましょう。

医師は副作用の程度や喘息のコントロール状況を踏まえて、薬の変更や追加対策を検討してくれます。

また、長期間良好にコントロールできている場合には、医師の判断で薬の量や種類を減らせる可能性もあります。

これは、「いつか薬を減らせるかも」というひとつの目標になるでしょう。

◆『喘息や咳喘息のときに行くべき病院』>>

【参考情報】『吸入ステロイド薬の副作用について教えてください。』東京都アレルギー情報navi.
https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/faq/asthma_adults.html#Q2

5. まとめ

「薬を飲んでいるのに咳が止まらない」と感じても、あわてて薬を自己判断で中断・変更することは避けましょう。

吸入ステロイド薬など喘息の長期管理薬はすぐに効かなくても少しずつ効果を発揮し、続けることで咳を根本から改善します。

むしろ自己判断で治療を中断すると症状が悪化・再発するリスクが高まります。

薬の効き方や改善までの目安を正しく理解し、不安なときこそ主治医に相談しながら治療を継続することが大切です。

正しい薬の使い方と医師との連携で、つらい咳症状をしっかりコントロールしていきましょう。

◆「喘息治療、ゴールは?」>>