喘息の人はストレスにも注意が必要

喘息の症状は、天気やアレルゲンだけでなく、ストレスとも深く関係しています。
「最近、ストレスがたまっていると咳がひどくなる気がする…」という方も少なくありません。
今回の記事では、ストレスと喘息の関係について、仕組みや注意点をわかりやすく解説します。
喘息とストレスの関係性を理解し、喘息を持つ方がより良い日常生活を送れるよう、ぜひ参考にしてください。
1.そもそもストレスとは
ストレスとは、「外部からの刺激」によって心と体が緊張状態となり、負担がかかることを指します。
この「外部からの刺激」はストレッサーと呼ばれ、環境的要因や身体的要因、心理・社会的要因があります。
以下は、ストレッサーとなるものの代表例です。
・人間関係の悩み
・仕事の量やプレッシャー
・生活環境の変化
・将来への不安
・暑さや寒さ、騒音
・病気や睡眠不足
これらの刺激を受けたとき、体は自律神経やホルモンの働きによって適応しようとします。
また、ストレスに対処する方法や行動を起こします。
これらは、短期間であれば、心や体を守る大切な働きです。
しかし、長期にわたって強いストレスを受け続けると対処しきれなくなり、心や体にさまざまな不調があらわれます。
この不調を「ストレス反応」と呼びますが、反応のあらわれ方は、個人によりさまざまです。
ストレス反応は、以下の表のように、心理面・身体面・行動面の3つに分けられます。
心理面のストレス反応 | 身体面のストレス反応 | 行動面のストレス反応 |
---|---|---|
活気や意欲の低下 | 体の痛みやだるさ | 飲酒量や喫煙量の増加 |
イライラ | 頭痛や腰痛 | 仕事でのミスや事故 |
不安 | 肩こり | 注意力の散漫 |
気分の落ち込み | 目の疲れ | 睡眠や生活リズムが崩れる |
興味・関心の低下 | 動悸や息切れ | 家に閉じこもる |
胃痛 | ||
食欲低下や過食 | ||
便秘や下痢 | ||
不眠 | ||
疲れ |
さらに、免疫力の低下やホルモンバランスの乱れを引き起こし、アレルギー症状の悪化や、喘息、生活習慣病などの症状を悪化させる要因になります。
このように、ストレスは心の問題にとどまらず、全身に影響を与える重要な健康リスクのひとつです。
【参考情報】『ストレスとは』厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh001/
【参考文献】”Stress may worsen asthma and has been linked to depression, anxiety, and other mental illnesses.” by National Center for Complementary and Integrative Health (NCCIH)
https://www.nccih.nih.gov/health/stress
2.良いこともストレスになる
ストレスというと、「嫌なこと」「つらいこと」というネガティブなイメージがあります。
しかし、実は「嬉しいこと」や「楽しいこと」もストレスのひとつになるのです。
たとえば、新しい職場や学校への入学、結婚や出産、引っ越し、旅行など、人生の節目や楽しみも心や体にとっては大きな変化です。
環境が変わることで、気づかないうちに自律神経やホルモンのバランスが乱れ、体調を崩すことがあります。
特に、喘息や生活習慣病のような慢性疾患を抱えている方には、知らず知らずのうちに疲労や緊張が蓄積して、大きな負担となっているケースがあります。
たとえば、「海外旅行に行く前にワクワクしていたのに、出発前からおなかが痛い」「結婚式の準備中に喘息の発作が出てしまった」というようなエピソードも少なくありません。
これらは、楽しいイベントでも心と体にとっては「適応すべき変化」として負担になっていたといえるでしょう。
また、人前で話す機会やイベントごと、スポーツ大会など、前向きな挑戦であっても緊張が高まり、自律神経が乱れ、ストレス反応を引き起こす可能性があります。
良い出来事でも「少し疲れたな」「なんとなく調子が悪いな」と感じたら、無理せず休むことが大切です。
◆「旅行したいけど喘息が心配。喘息の人が旅行を楽しむには」>>
3.喘息とストレスの関係
ストレスと喘息は密接に関係しており、喘息を持つ方にとっては症状を悪化させる大きな要因です。
気管支喘息の発作の誘因のトップ2は「気道感染」と「ストレス」といわれています。
喘息の気道過敏性は自律神経の状態の状態に大きく左右されているので気力を含めた体調管理は重要な治療要素となりますので気を付けましょう。
直接的に喘息の症状を悪化させるだけでなく、日常的に行っている喘息治療や管理がストレスにより疎かになるケースもあります。
たとえば、ストレスにより「疲労感が強く十分に掃除や片づけができない」「十分な睡眠がとれず生活習慣が乱れる」などです。
日常生活の中でのストレス管理は、喘息発作の予防や症状のコントロール、悪化防止につながります。
【参考情報】『気管支喘息(心身症)』日本女性心身医学会
https://www.jspog.com/general/details_63.html
【参考文献】”Asthma symptoms are more likely to flare in the face of psychosocial stress, such as low socioeconomic status and urban living.” by U.S. Department of Veterans Affairs
https://www.va.gov/WHOLEHEALTHLIBRARY/tools/asthma.asp
4.ストレスが喘息を悪化させる仕組み
喘息の悪化には、精神的ストレスと環境的ストレスの2つが大きく影響します。
【精神的ストレスが喘息に影響する仕組み】
精神的ストレスは、以下の2つの理由から喘息の悪化に影響を及ぼします。
・交感神経が活発になり気道が収縮する
・炎症性物質が増加し気道の炎症が悪化する
精神的なストレスを感じると、自律神経のうち「交感神経」が活発になり、気道が収縮しやすくなります。
気道が収縮すると、喘息の症状が出やすくなったり、すでにある症状が悪化したりする原因です。
また、過剰なストレスは免疫機能のバランスを崩したり、体内の炎症性物質が増加したりします。
そのため、ストレスが気道の炎症を悪化させるといわれています。
たとえば、「人事異動のあと、喘息発作がよく出るようになった」「受験生になってから咳がひどくなった」といったエピソードは、精神的ストレスが引き金となったケースです。
【環境的ストレスが喘息に影響する仕組み】
喘息の人の気道には、冷たい空気や乾燥した空気、香水や化粧品の香り、タバコの煙や大気汚染なども、気道にストレスを与えます。
喘息の方の気道は慢性的な炎症が起きているため、少しの環境的変化も刺激になります。
たとえば、「幹線道路沿いに住み始めたら喘息症状が悪化した」「寒い日に外に出たら咳が止まらなくなった」などは、環境的ストレスが原因となったケースです。
【参考文献】”The key measures included asthma exacerbations, severely negative life events, and chronic stressors.” by U.S. Environmental Protection Agency research repository
https://hero.epa.gov/hero/index.cfm/reference/details/reference_id/1260923
5.とくに成人喘息はストレスに注意
成人の喘息は、子どもの喘息とは異なる特徴があり、ストレスには特に注意が必要です。
上手にストレスのコントロールができなければ、睡眠不足になったり食生活が乱れたりなど、体調管理や喘息の管理に悪影響を及ぼします。
成人が抱えやすいストレスとして、以下のようなものが考えられます。
・仕事のプレッシャー
・家庭内のトラブル
・介護や育児の疲労と不安
・経済的不安
これらは慢性的に心と体に負担をかけ、気づかないうちに症状が悪化することも少なくありません。
そのため、成人喘息を持つ方は「ストレスは喘息の引き金になる」という意識を持ち、早めに心と体を休める工夫が必要です。
自分のストレスサインに気づき、無理をしすぎないことが、喘息のコントロールに大きく役立ちます。
【参考文献】”Asthma is a chronic lung condition … environmental pollutants … emotional stress.” by Harvard Health Publishing, Harvard Medical School
https://www.health.harvard.edu/a_to_z/asthma-a-to-z
6.生活習慣病にも注意が必要
生活習慣病とは、「健康的ではない生活習慣」が原因で発症する病気を指します。
以下は、生活習慣病と呼ばれる代表的な疾患です。
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・がん
・心疾患
・脳血管疾患
ストレスが続くと、暴飲暴食、喫煙量や飲酒量の増加などの生活習慣の乱れを引き起こす原因です。
自律神経やホルモンバランスの乱れは、血圧や血糖値、コレステロール値を不安定にさせます。
ストレスの蓄積は、生活習慣病の悪化や発症のリスクが高まるため、ストレスと生活習慣病は密接な関係といえるでしょう。
さらに、生活習慣病は喘息悪化にも関連しています。
たとえば、血圧の上昇に伴い心肺機能に負担がかかり、呼吸にも影響を及ぼします。
糖尿病が進行すると免疫力が下がり、風邪や感染症から喘息発作を引き起こす可能性もあります。
このように、生活習慣病とストレス、喘息は関連しているため、切り離して考えることはできません。
日常生活の中でストレスを上手にコントロールし、生活習慣病の予防や管理を心がけることが、喘息の悪化を防ぐ重要なポイントです。
【参考情報】『ストレスが心身に与える影響とは?』全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g4/cat450/sb4501/p009/
【参考文献】”Ongoing research has found stress is closely linked with many chronic diseases including asthma …” by University of Cincinnati
https://www.uc.edu/news/articles/2024/07/how-stress-can-mask-the-symptoms-of-chronic-disease.html
7.自分に合う方法でストレス発散を
ストレスは、喘息だけではなくさまざまな病気を引き起こす原因です。
そのため、ストレスは溜めずに、適度に発散するよう心がけましょう。
ストレスの発散方法は、人それぞれ異なります。自分にあったストレス発散方法を見つけましょう。
喘息がある方でも無理なく取り入れやすいストレス解消法を紹介します。
どんな方法がよいか、参考にしてください。
ただし、休息も大切です。無理のない範囲で行いましょう。
【深呼吸や瞑想でリラックスする】
ゆっくりとした呼吸を意識することで、自律神経のバランスを整え、心身の緊張を和らげます。
静かな場所で目を閉じて深く呼吸してみましょう。
アロマを焚いたり、ヒーリングミュージックをかけたりしてもリラックス効果が高まります。
【軽い運動を取り入れる】
喘息の方には、軽い運動はストレスの解消だけでなく、体力もつき喘息のコントロールにも効果的です。
ウォーキングやストレッチなど、軽めの運動は気分転換になり、気道を広げる効果や心肺機能を向上させる効果があります。
ただし、急激な運動は発作の引き金になる可能性があるため、十分なウォーミングアップを行い、自分の体調に合わせて行うことが大切です。
また、屋外で行う場合、冷たい空気や乾燥した空気に注意しましょう。
【趣味に没頭する時間を持つ】
好きな音楽を聴いたり、絵を描いたり、読書や映画、ガーデニングをしたり、自分の「好き」を楽しむ時間は、ストレスを和らげる強い味方です。
甘いものや美味しいものを楽しむのもいいでしょう。
しかし、ストレス発散で暴飲暴食をしたり、喫煙や過度な飲酒に頼ったりするのは逆効果です。
かえって喘息や生活習慣病を悪化させる可能性があるため、健康的な方法でリフレッシュすることが大切です。
自分に合ったストレス解消法を見つけて、無理なく日常に取り入れることで、喘息の安定にもつながります。
8.おわりに
ストレスは、喘息を悪化させる要因のひとつです。
喘息だけでなく、生活習慣病やアレルギー疾患の悪化にも関わります。
特に大人の喘息では、仕事や生活の中でさまざまなストレスにさらされやすく、それが症状の悪化に直結することもあります。
日々の生活の中でストレスサインに気づき、自分に合った方法で上手に解消していくことが、喘息症状のコントロールには大切です。
心と体の健康のバランスを大切にして、無理のない生活を心がけましょう。