原因別・子どもと大人別の喘息のタイプ

喘息はアレルギーとの関連が深い病気ですが、中にはアレルギー素因が強くないのに発症する場合もあります。

また、小児喘息はアレルギーが原因になることが多いのに対して、大人になってから発症する喘息はアレルギー以外の原因が多いなど、年齢によっても原因が異なります。

喘息の症状をコントロールするためには、症状が悪化する原因を特定し、原因に合わせた治療や日常生活管理を行う必要があります。

1.原因でわける2つの喘息タイプ


喘息は原因によって「アトピー型喘息」と「非アトピー型喘息」の2つのタイプに大別されますが、両方を合併していることも多いと言われています。

1-1.アトピー型喘息

アトピー型喘息は、ほこりやダニ、カビ、ペットの毛、花粉などのアレルギーによって起こります。

アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を鼻や口から吸い込んでから30分程度の短時間で起こる、即時型アレルギー反応によって発症する喘息です。

小児喘息はこのタイプが多く、春や秋など特定の季節に症状が悪化するのが特徴です。

〈アレルギーと喘息の関係〉

人間の体は、侵入してきたウイルスや細菌から守るために「免疫」という機能が備わっています。しかし、その免疫機能が過剰に反応してしまうとアレルギー反応が起こります。

もともとアレルギー素因を持つ人の体内にアレルゲンが侵入すると、IgE抗体という免疫物質が作られます。

このIgEがアレルゲンと結合して肥満細胞を刺激すると、すぐに細胞からヒスタミンなどのタンパク質が放出されます。それにより気道に炎症が起き、気道が狭くなって咳などの喘息症状が現れるのです。

アレルギー性疾患には喘息の他にも、花粉症(アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎)、急性蕁麻疹、食物アレルギーなどがあります。

このようなアレルギー疾患になりやすい体質を「アレルギー素因」と呼び、アレルゲンに対するIgE抗体を作りやすいため、複数のアレルギー疾患を併発している場合もあります。

アレルギー素因は遺伝する傾向にあるため、ご家族でアレルギー疾患を持っている方がいる場合は受診の際に伝えておきましょう。

【参考情報】『アレルギー総論』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-17.pdf

1-2.非アトピー型喘息

非アトピー型喘息は、原因となるアレルゲンが特定できない喘息のことです。

感染症やタバコの煙、薬剤、運動、天候、ストレス、アルコール、肥満などがきっかけとなって起こります。

特に、風邪やインフルエンザなどの感染症が原因として最も多いと言われています。感染症による気道の炎症がきっかけとなって喘息に発展するため、手洗いやうがい、マスクの着用など基本的な感染対策を心がけましょう。

非アトピー喘息は喫煙やアルコール、肥満など生活習慣に原因があることも多いため、成人発症型の喘息で多く見られ、慢性化しやすく治りにくいのが特徴です。

喫煙が喘息の危険因子となることはイメージしやすいと思います。喫煙は呼吸機能を低下させるだけでなく、タバコの煙が刺激となって気道の炎症を悪化させます。タバコを吸っていて咳が出る場合はすぐに禁煙しましょう。
受動喫煙によって喘息発作が起こる場合もあるため、注意が必要です。

お酒を飲むと、アルコール誘発性喘息を起こす場合もあります。
アルコールはまず、有害なアセトアルデヒドに分解され、ALDHという物質によって無害な酢酸に代謝されます。
しかし、お酒が弱い人や、飲むと顔が赤くなる体質の人はALDH活性が低いため、血中のアセトアルデヒド濃度が高くなり、気管支のむくみや気道収縮、ヒスタミン分泌などが起こり喘息発作を引き起こすことがあります。

◆「アルコール誘発喘息」について詳しく>>

肥満と喘息の関連はイメージしにくいかもしれませんが、肥満も喘息の危険因子だと言われています。
BMI25以上を肥満と呼び、特に「内臓脂肪型肥満」というお腹周りに脂肪が付きやすいタイプの人は注意が必要です。
肥満によってお腹の膨らみが横隔膜を押し上げて呼吸機能を低下させるだけでなく、脂肪細胞が気道を狭める「レプチン」という物質を分泌するなどの影響があるため、喘息発作を起こす可能性があります。

禁煙や節酒、肥満の解消をすることで喘息症状が改善する可能性がありますので、心当たりのある方は一度生活を見直してみましょう。

【参考情報】『アルコール誘発喘息』浅井貞宏
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/57/1/57_KJ00004840309/_pdf

2.子どもと大人の喘息の違いについて


基本的な症状は同じですが、年齢によって肺や気管支の成熟度や、喫煙などの環境因子が異なるため、治りやすさが変わってきます。

2-1.小児喘息

小児喘息は2~3歳までに60~70%が、6歳までに80%以上が発症すると言われています。

思春期以降は軽快する場合が多いものの、約30%は成人喘息に移行してしまいます。
また、成人喘息に移行しなかった人でも30%弱は成人になってから再発すると言われているため、症状が落ち着いてもアレルゲンの回避などの日常生活管理は続けていくと安心です。

子どもの場合は自覚症状を上手く伝えられなかったり、薬の吸入や管理が自分では難しかったりと、治療を続けていくのは大変かもしれません。しかし、子どものうちに適切な治療を開始することで、成長とともに良くなっていく傾向にあります。

小児喘息では学校などの生活で注意が必要なことがあります。
掃除の時間にほこりやチョークの粉を吸い込まないようにマスクをつけたり、運動時に発作が起きないように準備運動をしっかり行うことが大切です。必要に応じて学校に相談するなどして、喘息発作の原因となるものを避けて生活しましょう。

また、アレルギーによる喘息の場合は、他のアレルギー疾患になる可能性も高いと言われています。乳幼児期のアトピー性皮膚炎から始まり、食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎というように次々とアレルギー疾患が出現することを「アレルギー・マーチ」と呼びます。
アレルギー・マーチの予防のためには、少しでも症状が見られたら早期に治療を始めることが大切です。

【参考情報】『アレルギーについて』国立成育医療センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/about_allergy.html

【参考文献】”Childhood asthma” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/childhood-asthma/symptoms-causes/syc-20351507

2-2.成人喘息

成人喘息は、小児喘息から移行するケースと、小児期に喘息がなく成人になってから初めて発症する「成人発症喘息」があります。

成人発症喘息は成人喘息の70~80%を占め、年齢別にみると40~60歳代の中高年の発症が多いです。

大人の喘息は治らないというイメージですが、通院や治療、自己管理を続けていれば、完治とは言えないまでも長期間無症状の寛解状態に持ち込むことは可能だと言われています。
あきらめずに、治療と自己管理を続けていきましょう。

【参考情報】『成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-07.pdf

3.おわりに

喘息は原因や発症年齢によって、治療や治りやすさが異なります。
しかし、共通して言えるのは「定期的な通院、治療、自己管理が大切」だということです。

治療を続けることはもちろん、喘息の危険因子となるものを理解し、なるべく回避して生活するようにしましょう。