咳エチケットの方法と目的を知り、感染症を防ぎましょう
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、咳エチケットという言葉を目にすることも増えたと思います。
咳エチケットは、病気に感染しない・させないために有効な方法ですが、その効果を最大限に活かすには、一人一人が正しい方法で行う必要があります。
この記事では、咳エチケットの必要性や、咳で広がる病気などについて説明します。感染症の多い時期には、特に意識して実践していけるよう、参考にしてください。
1.咳エチケットが必要な理由
まずは、咳エチケットの目的を紹介します。
1-1.感染症の予防
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、風邪などは、ウイルスや細菌による呼吸器感染症です。
これらの呼吸器感染症は、咳やくしゃみなどで飛んだしぶきによる「飛沫感染」や、汚染された場所に触れることで広がる「接触感染」で、人から人へと移っていきます。
ウイルスや細菌に感染した人や、感染したかもしれない人は、周囲の人へ感染を広げないために、咳エチケットによる予防を意識していく必要があります。
特に高齢者や持病のある人は、免疫が低下しているためウイルスや細菌に感染しやすくなっているので、気遣いが大切です。
1-2.周囲の人への配慮
冷たい空気を吸った時や、急にむせ込んでしまった時など、健康な人でも何かのきっかけで咳が出ることはあります。
しかし、コロナやインフルエンザが流行している時期は、咳をしている人を見ると不安になる人も多いでしょう。
咳に対して敏感になっている人が多い時期や場所では、マナーとして咳エチケットを行っておくと、周囲の不安を軽減できるでしょう。
【参考文献】”Respiratory Hygiene/Cough Etiquette” by Centers for Desease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/oralhealth/infectioncontrol/faqs/respiratory-hygiene.html
2.咳エチケットの方法
この章では、咳エチケットの方法を解説します。
2-1.マスクを着用する
マスクは、以下のポイントを意識して製品を選び、正しく扱いましょう。
・鼻と口をしっかりと覆うサイズのマスクを使用する
・着用時は、鼻や口の周りに隙間ができないようにする
・マスクは1日使ったら捨てる
マスクを長時間着用していると、ひもで耳が痛くなることもあるため、耳への負担が少ない製品を選ぶのもよいでしょう。
2-2.咳が出そうになったら口を覆う
咳やくしゃみが出そうになったら、口からしぶきが飛ばないよう、以下の方法で対処しましょう。
・ティッシュやハンカチで口を覆う
・服の袖の内側などで口を覆う
しぶきを受けた箇所には、ウイルスや細菌が付着している可能性があります。口を覆ったティッシュはすぐに捨て、ハンカチや洋服は早めに洗濯するようにしましょう。
3.咳で広がる主な呼吸器感染症
咳やくしゃみで感染が広がる呼吸器の病気を紹介します。咳エチケットで、これらの病気を防ぎましょう。
3-1.風邪
ウイルスや細菌が原因で、鼻やのどの粘膜が炎症を起こし、呼吸器の症状などが現れる病気です。
【主な症状】
・咳
・発熱
・鼻水
特に治療はしなくても、自然と治ることが多いのですが、症状が辛い時は、咳止め薬などを用いて体の負担を和らげます。
3-2.インフルエンザ
インフルエンザウイルスに感染後、潜伏期間1~3日ほどで、以下のような症状が急に現れます。
【主な症状】
・発熱(通常38℃以上の発熱)
・筋肉熱や関節痛
・全身の倦怠感
上記のような症状が先に出てから、のどの痛みや咳などが現れることが多いです。
発症後48時間以内であれば、タミフルなどの抗ウイルス薬の効果が期待できます。
インフルエンザの予防には、ワクチンが有効です。重症化を防ぐためにも接種しておきましょう。
3-3.新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、感染後、潜伏期間2~7日ほどで症状が現れます。
【主な症状】
・発熱
・咳
・のどの痛み
ほかにも、息苦しさや頭痛、味覚障害などさまざま症状が報告されています。
また、後遺症として咳が長引くこともあります。
治療には抗ウイルス薬や、咳などの症状を抑える薬を使用します。重症化を防ぐためには、ワクチンの接種が有効です。
3-4.RSウイルス感染症
風邪の原因となるウイルスの一種であるRSウイルスによる病気です。
ウイルスに感染後、潜伏期間2~8日(多くは4~6日)ほどで、以下のような症状が現れます。
【主な症状】
・発熱
・咳
・鼻水
2歳までに、ほぼ100%の子どもが1度は感染する病気です。
治療は、咳などの症状を抑える対症療法が中心となります。
乳児や高齢者は、感染すると重症化の恐れがあるので注意が必要です。
「ヒューヒュー、」「ゼイゼイ」という異常な呼吸音など、息苦しい様子が見られた場合は、すぐに病院を受診してください。
2023年に「アレックスビー」というワクチンが認可されたため、対象となる60歳以上の方は、近い将来ワクチンによる予防が可能となるでしょう。
3-5.百日咳
百日咳は、百日咳菌に感染後7~10日程度の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。
【主な症状】
・咳
・鼻水
・発熱
咳は、軽い症状から徐々に悪化して激しくなり、回復するまでに2~3ヶ月ほどかかることがあります。
治療には、マクロライド系と呼ばれる抗菌薬を用います。
重症化を防ぐには、抗菌薬による早期の治療や予防接種が効果的です。
【参考情報】『百日咳とは』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/477-pertussis.html
3-6.肺結核
結核菌が肺に感染して起こる病気です。
【初期症状】
・咳
・痰
・倦怠感
症状が2週間以上続いていたり、良くなったり悪くなったりを繰り返す場合は、早めに病院を受診しましょう。
治療には、複数の抗結核薬を用います。
4.咳が出る病気の人・咳エチケットができない人にも配慮を
咳が出ても人にはうつらない病気があることや、事情により咳エチケットができない人がいることも知っておきましょう。
4-1.咳が出ても感染しない病気
咳が出ても感染しない病気には、以下のようなものがあります。
・喘息
・咳喘息
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・アトピー咳嗽
これらの病気では、どんなに激しい咳が出ても、人にうつることはありません。
4-2.障害のためマスクがつけられない
身体障害や知的障害、精神障害などを持つ人は、障害の特性ゆえにマスクの着用が困難な場合があります。
例えば、感覚が過敏であるため、マスクの着用が非常に大きなストレスとなってしまう人がいます。
咳エチケットの重要性を知るとともに、さまざまな事情により実行できない人もいることを理解しておきましょう。
【参考情報】『マスク等の着用が困難な状態にある方への理解について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14297.html
5.おわりに
咳エチケットは、周りの人々を思いやるためのマナーです。手洗いやうがい、予防接種なども同時に行い、感染症を予防しましょう。
特に感染症が広まっている時期は、誰もが咳エチケットを実践することで、自分を守り、周囲も守ることができます。
咳が出そうになったら、すぐにできるよう、大人はお子さんにも教えておきましょう。