咳で息苦しい時に考えられる病気

咳が出ると息苦しさを感じる場合には注意が必要です。
これは、呼吸器系に影響を与えるさまざまな病気の兆候かもしれません。
この記事では、咳で息苦しくなる可能性のある代表的な病気について詳しくご説明します。
2週間以上咳が治らなかったり、咳が出て息苦しかったりする場合は、早めに呼吸器内科への受診を検討しましょう。

1.咳で息苦しくなるほどの病気


咳が出て息苦しくなる場合、以下のような病気が原因であることがあります。ここからは、息苦しいと感じるほどの咳が出る代表的な病気をご紹介します。

1-1.肺炎

肺炎は、肺に炎症が起きる病気で、細菌、ウイルス、真菌などが原因となります。
主な症状には、高熱、寒気、胸痛、咳、痰(特に膿や血が混ざることもある)があり、これらが急速に現れることが多いです。
肺炎の咳は通常、湿った咳で痰を伴います。咳が激しくなると、息苦しさを感じることがあります。
進行すると、肺の酸素交換能力が低下し、全身への酸素供給が不足するため、息切れや呼吸困難を感じることがあります。
特に急性肺炎では急速に症状が進行し、呼吸不全を引き起こすこともあります。
肺炎は、特に免疫力が低下している高齢の方や基礎疾患を持つ方が重篤化しやすいとされます。

1-2.喘息

喘息は、気道が炎症を起こし、狭くなることで起こる慢性的な病気です。
主な症状は、咳、喘鳴(ヒューヒューという音)、息切れ、胸の圧迫感などがあります。これらの症状は、夜間や早朝に悪化することが多いです。
喘息の咳は、特に夜間や運動後に悪化し、乾いた咳であることが多いです。
喘息発作が起こると、気道が極端に狭くなり、息を吸うことも吐くことも難しくなります。このため、強い息苦しさを感じることがあります。
アレルギー反応によって引き起こされることが多く、ダニ、花粉、ペットの毛などが発作のきっかけとなることがあります。

治療として、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を定期的に使用し発作を管理します。

【参考文献】”Asthma” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653

◆「喘息発作が起きたときの対処法」について詳しく>>

1-3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPDは、肺気腫や慢性気管支炎を含む疾患群です。
COPDは気道の閉塞が進行する慢性的な肺疾患で、主に喫煙が原因です。
主な症状には、慢性的な咳、痰、息切れ、喘鳴などがあります。COPDの咳は、通常湿った咳で、痰を伴います。
症状はゆっくりと進行し、時間とともに悪化します。
気道や肺胞の構造が破壊されるため、進行すると日常的な活動中にも息切れや息苦しさを感じることが多くなるなど、息をすることが難しくなります。
COPDの管理には、禁煙が最も重要です。
治療には薬物療法や酸素療法が行われることがあります。

◆「COPD」について詳しく>>

1-4.気管支炎

気管支炎は、気管支の炎症によって引き起こされる病気で、急性と慢性の二種類があります。
急性気管支炎は主にウイルス感染によって発症し、慢性気管支炎は喫煙や大気汚染が原因となることが多いです。
症状には、咳、痰、喉の痛み、発熱、胸部不快感などがあります。咳は通常、痰を伴う湿った咳です。
急性気管支炎の場合、咳が激しくなると、息苦しさを感じることがあります。
また、慢性気管支炎の場合も、持続的な咳とともに息切れや息苦しさを感じることがあります。
慢性気管支炎は長期にわたる咳が特徴であるため、治療には持続的な管理が必要です。

1-5.間質性肺炎

間質性肺炎は、肺の間質(気管支や肺胞を支える組織)が炎症を起こす病気です。
主な原因には、自己免疫疾患や職業性の曝露があります。
症状は、乾いた咳、息切れ、疲労感、体重減少などです。咳は通常、乾いた咳で、持続的です。
間質性肺炎は、進行が速いタイプと遅いタイプがあり、早期診断と治療が重要といえます。
進行すると、肺が硬くなり、酸素の吸収が困難になるため、息苦しさや呼吸困難を感じることがあります。特に、運動時や日常的な活動中に息苦しさが顕著になります。
間質性肺炎の治療には、免疫抑制薬や抗線維化薬が使用されます。

1-6.肺結核

肺結核は、結核菌によって引き起こされる感染症です。
主な症状には、持続的な咳、血痰、発熱、夜間の発汗、体重減少などがあります。咳は、乾いた咳や痰を伴う咳が見られます。
慢性的に進行し、症状が徐々に悪化することが多いです。結核菌が他の臓器に広がると、全身的な症状が現れることがあります。
進行すると、肺の機能が低下し、酸素供給が不足するため、息苦しさや呼吸困難を感じることがあります。
特に、血痰が出る場合は注意が必要です。
肺結核の治療には、長期的な抗結核薬の服用が必要であり、早期診断と治療が重要です。

1-7.アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は、花粉やハウスダストなどのアレルゲンに対する過敏反応によって引き起こされる鼻の炎症です。
主な症状には、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどがあります。これらの症状は、季節性のもの(花粉症)や通年性のものがあります。
アレルギー性鼻炎が悪化すると、後鼻漏(鼻から喉に流れる粘液)によって咳が引き起こされることがあります。特に、夜間や横になると咳が悪化することが多いです。
持続的な咳が続くと、気道が狭くなり、息苦しさを感じることがあります。
アレルギー性鼻炎の管理には、抗ヒスタミン薬やステロイド鼻スプレーが使用されます。

1-8.心不全

心不全は、心臓の機能が低下し全身に十分な血液を送り届けられなくなる状態です。
主な原因には、冠動脈疾患、高血圧、心筋症などがあります。
症状は、息切れ、浮腫(むくみ)、疲労感、体重増加、夜間の頻尿などです。
心不全では、肺に液体がたまりやすくなり、これが原因で咳が出ることがあります。横になった時に悪化することが多く、夜間に咳がひどくなることがあります。
進行すると、慢性的な息切れや呼吸困難を感じることが増えます。
治療には、利尿薬やACE阻害薬、β遮断薬などが用いられ、生活習慣の改善も重要です。

1-9.気胸

気胸は、肺の表面に穴が開き、そこから空気が漏れて胸腔内にたまる状態です。

主な原因は、外傷や肺疾患、突然の圧力変化などがあります。

症状は、突然の胸痛、息切れ、乾いた咳、疲労感などです。

気胸では、突然の乾いた咳が現れることが多く、息苦しさを感じる場合があります。進行すると、肺が圧迫され、呼吸が困難になるため、強い息切れや胸部不快感を伴います。
治療には、胸腔ドレナージや外科的処置が必要となることがあり、早期の診断と治療が重要です。
特に10歳台後半、20歳代、30歳代に多く、やせて胸の薄い男性や肺の基礎疾患を持つ方に多く見られます。

1-10.肺高血圧症

肺高血圧症は、肺の血管に高い圧力がかかる状態で、原因にはさまざまな要素があります。
主な原因は、心疾患、慢性肺疾患、血栓などです。
症状には、息切れ、胸痛、めまい、疲労感、浮腫などがあります。特に運動時や活動中に症状が悪化することが多いです。
肺高血圧症では、慢性的な咳が現れることがあります。乾いた咳の場合が多く、息苦しさを伴います。
病気が進行すると、心臓への負担が増し、全身への血液供給が不足するため、強い息切れや疲労感を感じることが増えます。
治療には、薬物療法や外科的処置が必要です。

2.おわりに

咳が続き、息苦しさを感じる場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

これらの症状が現れる病気は早期診断と適切な治療が重要です。
医師の診察を受けることで、適切な治療を受けることができ、症状の改善が期待できます。
また、喫煙や大気汚染などのリスク要因を避けることや、定期的な健康チェックも重要です。

◆「呼吸器内科とはどんなところ?」について詳しく>>