横になると咳が出る…考えられる理由や病気、対処法

横になると咳が出る原因はさまざまなことが考えられます。

例えば、空気の通り道である気道の乾燥や圧迫、アレルギー、胃食道逆流症などです。呼吸器感染症や喘息、咳喘息などの病気も関与しているかもしれません。

この記事では、これらの原因や病気、対処法について詳しくご説明いたします。咳が続く場合は、早めに呼吸器内科で適切な検査を受けましょう。

1.横になると咳が出るのはなぜ?


寝転んだり、横になったりした際に、急に咳込んだ経験がある方も多いかもしれません。
ここからは、横になると咳が出る理由についてご紹介します。

1-1.気道の乾燥

横になると咳が出る理由のひとつに、気道の乾燥があげられます。

冬の時期や暖房、空調の効いた部屋ではとくに空気が乾燥しやすくなるので注意が必要です。

空気の乾燥により気道が乾燥し、粘膜のバリア機能が低下しやすくなります。

乾燥した気道はウイルスや異物からのダメージを受けやすいため、炎症が起こったり、刺激に対する反応として咳が出やすくなったりするのです。

気道の乾燥を防ぐためには、適切な加湿が必要といえるでしょう。

その場合、加湿器を使用することで室内の湿度を保ち、気道の乾燥を防ぐことができます。

※ただし、加湿器を掃除をせずに使用を続けると、カビが発生しカビを部屋中にまき散らすことになるため、こまめなお手入れを行う必要があります。

また、水分をこまめに摂取することも重要です。とくに温かい飲み物は気道を潤し、乾燥を防ぐ効果があります。喉飴やはちみつ入りの温かいお茶なども効果的です。

1-2.気道の圧迫

首まわりに脂肪が多い方の場合は、横になると気道の一部が圧迫されやすくなります。

そのため気道が狭くなり、空気が通りにくくなって呼吸が苦しくなり、咳が出ることがあります。

また、気道の圧迫が原因で睡眠時無呼吸症候群(SAS)を引き起こす場合もあります。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に一時的に呼吸が停止することが特徴です。しばしば激しいいびきや突然の咳を伴います。

気道の圧迫を防ぐために、体重管理が重要です。バランスの取れた食事と適度な運動を心掛けましょう。

また、寝るときの姿勢を工夫することも効果的です。とくに、枕を高くして上半身を少し起こすようにすると、気道の圧迫を軽減することができます。

◆「睡眠時無呼吸症候群とは?」について詳しく>>

1-3.アレルギー

喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患を持つ方も、横になると咳がでやすいとされます。

布団やソファーといった布製品には、ダニやホコリ、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が多く含まれています。横になるとこれらのアレルゲンに反応しやすいため、咳が出る場合があります。

とくに布団や枕はダニの温床となりやすく、定期的な掃除や洗濯が必要です。

アレルギーを持つ方は、アレルゲンを除去するために寝具をこまめに洗濯し、日光に当てて乾燥させることが大切です。

アレルギー用のカバーを使用することも有効です。これにより、ダニやホコリの侵入を防ぎ、アレルギー症状を軽減することができます。

さらに、空気清浄機を使用することで、室内のアレルゲンを除去し、清潔な環境を保つことができます。

※ただし、空気清浄機をメンテナンスせずに使い続けるとカビの温床になることがあるため、フィルターなどのこまめな掃除、お手入れが必要です。

1-4.胃食道逆流症(逆流性食道炎)

胃食道逆流症は、胃酸が食道に逆流することで喉を刺激し、咳が出ることがあります。

とくに横になると胃酸が逆流しやすくなるため、咳が悪化しやすいです。胸やけや酸味のある液体が喉に上がってくる感覚を伴うことがあります。

胃食道逆流症の予防には、食事の量や内容に気をつけることが重要です。脂肪分の多い食事や辛い食べ物、アルコールやカフェインを避けると良いでしょう。

生活面では食後すぐに横になることは避け、少なくとも2~3時間はからだを起こしておくことが必要です。

また、寝るときには、枕を高くして上半身を少し起こすようにすると、胃酸の逆流を防ぎやすくなります。

【参考文献】”Gastroesophageal reflux disease (GERD)” by MayoClinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/gerd/symptoms-causes/syc-20361940

2.横になると咳が出る。考えられる呼吸器の病気


横になった際に咳が出る場合、原因として呼吸器の病気が考えられます。
ここでは、代表的な呼吸器の病気についてご説明いたします。

2-1.呼吸器感染症

代表的な症状が咳である病気に、風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスなどの呼吸器感染症があります。

症状が悪化し強い症状が出ると、横になっても咳が続くことがあります。夜間に咳が悪化しやすく、睡眠の妨げとなる場合もあるでしょう。

呼吸器感染症にかかった際には、十分な休養と水分摂取が重要です。咳がひどい場合は、医師の診察を受けて適切な治療を受けましょう。

治療では、抗ウイルス薬や抗生物質、咳止め薬などが処方されます。

呼吸器感染症で咳がつらい場合は、室内の湿度を保つために加湿器を使用することも有効です。加湿することで、気道の乾燥を防ぎ、咳の症状を軽減することができます。

2-2.喘息

喘息は、気道が狭くなり呼吸が困難になる病気です。

布団に含まれるダニやその死骸、糞が喘息の原因になる場合があり、横になると症状が悪化し、咳がひどくなる場合があります。そのため、夜間や早朝に悪化しやすい方が多いでしょう。

そのほか、息切れ、胸の圧迫感、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音)などが主な症状です。

喘息の管理には、アレルゲンの除去が重要です。
寝具の定期的な洗濯や掃除、空気清浄機を使用することなどでアレルゲンを減らしましょう。

治療としては、吸入薬を使用し発作を抑えます。

定期的な診察を受け、適切な治療を続けることが大切です。

【参考文献】”Asthma” by MayoClinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653

2-3.咳喘息

咳喘息は、症状が喘息に似ていますが、主な症状は慢性的な咳のみであることが特徴です。乾いた咳が持続し、とくに夜間や横になったときに咳が出やすくなります。

喘息とは異なり、喘鳴や息切れがほとんど見られません。

咳喘息の診断には、呼吸機能検査やアレルギー検査が行われます。

治療は、気管支拡張薬やステロイド薬の吸入が効果的です。

さらに、アレルゲンの除去や生活環境の改善も重要です。室内の掃除や加湿、適切な寝具の使用などで症状を軽減することができます。

【参照文献】『「もしかしてぜん息?」と思っている方へ』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/check.html

3.呼吸器内科で行う検査


横になると咳がでてつらい場合に、呼吸器内科で行う検査についてご説明いたします。
適切な治療をするために、病気の正確な診断が不可欠です。

3-1.画像検査

胸部X線やCTスキャンなどの画像検査では、肺や気道の異常を確認します。肺炎や気管支炎、腫瘍などの有無を調べることが可能です。

咳の原因を特定するために重要な手段であり、早期の診断と治療に役立ちます。

3-2.血液検査

血液検査では、アレルギーの有無や炎症の程度を確認します。咳の原因がアレルギーによるものかどうかを判断することが可能です。

IgE抗体や、好酸球の数値を調べ、アレルギー反応の有無を確認します。

IgE抗体はアレルゲンに反応してアレルギー反応を引き起こす抗体で、好酸球は数が多いと寄生虫感染やアレルギー疾患などが疑われます。

また、全身性の炎症反応を示すCRP(C反応性蛋白)や白血球数を測定し、感染症や炎症の程度を把握します。

3-3.呼吸機能検査

呼吸機能検査(スパイロメトリー、モストグラフ)は、肺の機能を測定するための検査です。とくに喘息や咳喘息の疑いがある場合によく行われます。

スパイロメトリーは、息を強く吸ったり吐いたりすることで、肺の容量や気道の狭さを測定します。

モストグラフは、胸郭(きょうかく:呼吸と内臓保護を担う、肋骨と背骨でできた籠状の骨格)の動きを計測することで、肺の弾性や抵抗を評価することが可能です。

気道の狭さや炎症の有無を詳細に確認し、治療に役立てます。

4.横になると咳がでる時の自宅でできる対処法


寝ようとしたのに横になると咳がでて眠れない場合、自宅でできる対処法を試してみましょう。
ここでは、自宅でできる対処法についてご紹介いたします。

4-1.水分摂取

喉が乾燥していると咳が出やすくなるため、水分摂取は効果的です。

冷たい飲み物は喉への刺激になる場合があるので、なるべく温かいものの方がいいでしょう。温かい飲み物は喉を潤し、気道の乾燥を防ぐ効果があります。

温かいお茶やスープ、はちみつ入りのホットレモンなどが喉に優しくおすすめです。

水分をこまめに摂取することで、気道の粘膜を保護し、咳を軽減することができるでしょう。

4-2.部屋の加湿

部屋の加湿が咳の軽減に効果的です。乾燥した空気は気道を刺激し、咳を誘発することがあります。

加湿器を使用することで部屋の湿度を適度に保つと、喉や気道の乾燥を防ぐことが可能です。特に冬場は空気が乾燥しがちなので、注意しましょう。

加湿器を利用するか、濡れタオルを部屋にかけておく方法も効果的です。

4-3.寝るとき頭を高くする

寝るときに頭を高くすることも咳の軽減に効果があります。

横になった際に喉に分泌物が溜まり、咳を引き起こす原因となるのを防ぐ効果が期待できます。

簡単にできる方法としては、枕をもう一つ追加して頭を高くしてみましょう。喉や気道の通りがよくなり、咳を抑えることができるでしょう。

4-4.アレルギー物質の除去

ダニやホコリなどのアレルギー物質の除去も咳の対策として効果的です。

寝室の掃除をこまめに行い、寝具を定期的に洗濯しましょう。また、空気清浄機を使用することで、部屋の空気中のアレルギー物質を減らすことができます。

5. おわりに

横になると咳が出る原因には、気道の乾燥や圧迫、アレルギー、胃食道逆流症などさまざまな要因が考えられます。
これらの対策として、水分の摂取、部屋の加湿、頭を高くして寝る、アレルギー物質の除去などが有効です。

しかし、咳が2週間以上続く場合や、他の症状が現れる場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

自己判断で放置せずに、適切な検査と治療を受けることが大切です。

◆「呼吸器内科とはどんな診療科?」について詳しく>>