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喘息の方でもスポーツはできる?おすすめのスポーツと注意点について解説

喘息患者さんのなかにはスポーツを諦めていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

しかし、適切な対策を取れば、喘息の方でも安全にスポーツを楽しむことができます。

この記事では、喘息患者さんにおすすめのスポーツや注意点、発作を予防するための方法などをご説明いたします。

スポーツを通じて体力をつけ喘息症状の改善につなげていきましょう。

1. 喘息の方がスポーツする時に注意すべきこと


喘息患者さんがスポーツをする際には、いくつかの注意点があります。
とくに気をつけたいのが「運動誘発喘息」です。

運動誘発喘息とは、運動をきっかけに喘息発作が引き起こされる現象のことです。

運動開始から数分後、あるいは運動終了後に咳や喘鳴(ぜんめい・息をする際にゼーゼー・ヒューヒューという音が鳴る)、呼吸困難などの症状が現れます。

運動誘発喘息が起こりやすい条件としては、以下のようなものが挙げられます。

・激しい運動や長時間の運動を行った場合
・普段から喘息のコントロールが十分でない場合
・気道が過敏で、わずかな刺激でも発作が誘発されやすい場合
・空気が冷たく乾燥している環境での運動

運動誘発喘息の症状は通常、5分程度でピークに達し、そのあと徐々に治まっていきます。

しかし、事前に適切な対策を取ることで、運動誘発喘息の症状を予防することも可能です。

◆「喘息の症状」について詳しく>>

◆「運動誘発性喘息」についてもっと詳しく>>

運動誘発喘息はお子さんにみられることが多いですが、純粋な運動誘発喘息の頻度はあまり多くないとされています。

多くは通常の喘息治療が不十分なために引き起こされる発作がほとんどであり、適切に喘息治療を行うことで運動をさけることは必要ない場合が多いです。

適切な治療をされた喘息患者さんはむしろ運動を積極的にやったほうが良い場合が多く、まず専門医に受診し適切に治療指導を受けることが寛容です。

◆「喘息や咳喘息のときに行くべき病院」>>

◆「喘息治療のゴール」とは>>

【参考文献】”Exercise-induced asthma” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/exercise-induced-asthma/symptoms-causes/syc-20372300

喘息患者さんでも、適切な方法を取り入れれば、安心してスポーツを楽しむことができます。

大切なのは、ご自身の体調や症状を正しく理解し、無理のない運動を選ぶことです。

まず、主治医と相談し、運動前後の薬の使用方法や、万が一の発作時の対応を確認しておきましょう。

また、運動を始める前にはウォーミングアップを行い、からだを徐々に慣らすことが重要です。

運動中は、呼吸や体調の変化に注意を払い、少しでも異変を感じたら無理をせず休憩を取るようにしましょう。

適度な運動は、心肺機能を向上させるだけでなく、喘息の症状改善や発作の予防にも役立ちます。

さらに、体力がつくことで日常生活の息切れが軽減され、肥満や生活習慣病の予防にもつながります。

「喘息があるから運動は無理」と思う必要はありません。
むしろ、正しい知識と工夫を取り入れれば、健康的で充実したスポーツライフを楽しむことができます。

◆「喘息でも注意すれば運動はできる」>>

【参考文献】”Being Active with Asthma” by American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/managing-asthma/asthma-and-exercise

2. 喘息の方におすすめのスポーツ


前述した通り、喘息があるからといって、運動をあきらめる必要はありません。

適切なスポーツを選ぶことで、体力の向上や呼吸機能の強化にもつながります。

とはいえ、すべてのスポーツが喘息に適しているわけではありません。

運動中に発作が起こりにくい種目を選び、安全に楽しむことが大切です。

ここからは、喘息患者さんにおすすめのスポーツと、その理由をご説明いたしましょう。

<水泳>
水泳は、喘息患者さんにとって最もおすすめのスポーツのひとつです。

水中で行う運動であるため、湿度が十分に保たれており、気道の水分が失われにくいという大きな利点があります。

とくに室内の温水プールであれば、水温が一定に保たれているため、冷気による刺激も少なく、1年中安全に楽しむことができます。

水の浮力によってからだへの負担も軽減されるため、ほかのスポーツよりも息切れしにくいのも特徴です。

水泳は全身運動であり、心肺機能の向上や筋力アップにも効果的です。

ただし、屋外のプールを利用する場合は、気温や天候の変化に注意が必要です。

また、塩素に敏感な方もいらっしゃいます。
その場合は主治医に相談してから始めるようにしましょう。

<ヨガ>
ヨガも喘息の患者さんにとっておすすめのスポーツです。

ゆっくりとした動きと深い呼吸を組み合わせるヨガは、呼吸機能の改善筋力アップストレス解消に効果があります。

ある研究結果によると、定期的なヨガの実践が喘息症状を和らげ、生活の質を向上させるという報告もあります。

ヨガのポーズと呼吸法の組み合わせは、肺機能を高め呼吸筋を強化する可能性が考えられます。
深い呼吸を意識することで、より多くの酸素を体内に取り込み、血流を改善し、新陳代謝を活性化させます。

さらに、ゆっくりとした呼吸は自律神経のバランスを整え、ストレス軽減にも役立つでしょう。

ただし、はじめてヨガを始める際には注意が必要です。
必ず、経験豊富なインストラクターの指導のもとで始めるようにしましょう。

また、逆立ちなどの激しいポーズは避け、ご自分のペースでゆっくりと進めることが重要です。

<ウォーキング>
ウォーキングは、どなたでも手軽に始められる有酸素運動です。
そのため、喘息患者さんにとっても安全で効果的なスポーツのひとつだと言えます。

ウォーキングはご自分のペースで行えるのも利点です。
息切れしにくく、徐々に体力をつけていくことができます。

また、屋外でのウォーキングは新鮮な空気を吸いながら行えるため、気分転換にもなります。

ただし、花粉の多い季節や大気汚染が激しい日は避け、天候の良い日を選んで行うようにしましょう。

また、寒い季節は口や鼻を覆うマスクやスカーフを使用し、冷たい空気が直接気道に入らないよう注意が必要です。

◆「喘息予防、発作予防に有効なマスクの選び方と使い方」>>

<軽い筋力トレーニング>
適度な筋力トレーニングも、喘息の方におすすめです。
筋力が向上すると、日常生活での動作が楽になり、息切れも軽減されます。

自重を使った軽いトレーニングから始め、徐々に負荷を上げていくのがよいでしょう。
腕立て伏せ、スクワット、腹筋運動などは、自宅でも簡単に行えます。

ただし、無理をせず、ゆっくりとしたペースで行うことが大切です。

息を止めて力むような動作は避け、常に呼吸を意識しながら行いましょう。

<そのほかのスポーツ>
上記以外にも、野球バレーボールゴルフ体操など、休憩を取りながら行えるスポーツも喘息の方に適しています。

これらのスポーツは、行動の合間に呼吸を整える時間があるため、肺への負担が比較的少ないのが特徴です。

一方で、ジョギング、サッカー、バスケットボール、マラソンなど、持久力を必要とするスポーツは、喘息の方にとってはやや負担が大きいとされています。

これらのスポーツを行う場合は、とくに注意が必要です。

ただし、プロのサッカー選手など、喘息があっても激しいスポーツで活躍している方もいます。

やりたいスポーツがある場合は、あきらめずに主治医に相談してみましょう。

適切な管理と対策を行えば、さまざまなスポーツを楽しむことができる可能性があります。

喘息の方がスポーツを選ぶ際は、ご自分の体調や症状をよく理解し、無理のない範囲で始めることが大切です。

どのスポーツを選ぶにせよ、必ず主治医に相談し、適切なアドバイスを受けてから始めるようにしましょう。

【参照文献】Nagarathna R, et al: Yoga for bronchial asthma: a controlled study.
British Medical Journal『呼吸器系の疾患』
https://www.ejim.ncgg.go.jp/doc/pdf/yoga/10-kokyuukikeinosikkann-15.pdf

【参考文献】”Asthma and Exercise” by Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/asthma/asthma-and-exercise

3. スポーツで発作を起こさないために


喘息をお持ちの方がスポーツを楽しむためには、発作を予防することが重要です。

ここでは、スポーツの際に喘息発作を起こさないための具体的な方法についてご説明いたします。

3-1. スポーツする環境を整える

スポーツを行う環境は、喘息発作の予防に大きく影響します。
以下のポイントに注意して、適切な環境でスポーツを行いましょう。

・温度と湿度の管理
寒冷や乾燥した環境は避け、適温・適湿の場所を選びます。室内スポーツは環境管理がしやすいです。

・季節と天候への配慮
花粉の多い季節や風の強い日は屋外スポーツを控えめにします。

◆「季節の変わり目は喘息発作の予防を!」>>

・マスクの使用
寒い季節の屋外運動時はマスクで気道を守りましょう。激しい運動時は適宜調整してください。

・アレルゲンの回避
ご自身のアレルゲンを把握し、アレルゲンのある環境でのスポーツは避けます。

・適切な時間帯の選択
大気汚染の少ない早朝や気温の安定した時間帯を選びましょう。

◆「朝の咳と夜の咳の違い」について詳しく>>

・水分補給の準備
喉の渇きは気道乾燥につながるため、こまめな水分補給が重要です。

これらの点に注意を払い、ご自分に適した環境でスポーツを行うことで、喘息発作のリスクを大幅に減らすことができます。

ただし、体調が優れない日はスポーツを控えるなど、柔軟な対応が大切です。

3-2. 準備運動をする

適切な準備運動は、喘息発作の予防に非常に重要です。

急に激しい運動を始めると、呼吸が急激に変化し、気道に負担がかかりやすくなります。

ここでは、喘息患者さんに適した準備運動の方法についてご説明します。

1. 十分な時間確保
5〜10分程度のゆっくりとした準備運動を行います。

2. 段階的な強度上昇
軽い動きから始め、徐々に強度を上げていきます。

3. 全身ストレッチ
筋肉をほぐし、からだへの負担を軽減します。

4. 呼吸法の練習
ゆっくりとした深い呼吸を意識します。

5. 軽い有酸素運動
心肺機能を徐々に高めます。

6. クールダウン
運動後も徐々に強度を落とします。

7. 体調チェック
呼吸や体調を観察し、無理をしないようにします。

8. 季節に応じた準備
寒い季節はより長めの準備運動を行います。

9. 薬の使用
主治医の指示がある場合は、運動前に予防薬を使用することも効果的です。
通常、運動の15〜30分前に吸入薬を使用することで、運動誘発性喘息を予防できる場合があります。

上記のように適切な準備運動や対応を行うことで、からだを徐々に運動に慣らし、急激な呼吸の変化を避けることができます。

これにより、運動中の喘息発作のリスクを大幅に減らすことが可能です。

3-3. スポーツの継続

スポーツを継続的に行うことは、喘息の方にとって大きなメリットがあります。

定期的な運動は心肺機能を向上させ、喘息症状の改善や発作の予防につながるのです。

以下は、喘息の患者さんにとってのスポーツ継続による代表的な利点です。

・心肺機能の向上
運動により心臓や肺の機能が強化され、息切れや喘息発作の頻度が減少します。

・体力の向上
全身の筋力や持久力が向上し、日常生活がより楽になります。

・免疫機能の強化
適度な運動は免疫機能を高め、感染症への抵抗力を向上させます。

・ストレス解消
運動は精神的ストレスを軽減し、喘息症状の改善につながります。

・体重管理
適正体重の維持は喘息症状の管理に重要です。

・自信の向上
運動継続により自信がつき、喘息と向き合う姿勢にも良い影響を与えます。

・睡眠の質の向上
良質な睡眠はからだの回復を促し、喘息症状の安定に寄与します。

スポーツを継続するコツとして、まずはご自分に合ったペースで始めることが重要です。

また、楽しめるスポーツを選ぶことで、継続しやすくなります。
目標を設定し、達成感を味わうこともモチベーションを維持する要素となります。

さらに、定期的に主治医に相談することで、適切な管理が可能になります。

スポーツを継続することは、一朝一夕にはできません。
しかし、小さな一歩から始めて、徐々に習慣化していくことで、大きな変化を生み出すことができます

喘息があっても、適切な管理継続的な運動により、健康的で活動的な生活を送ることが可能なのです。

3-4. 腹式呼吸

腹式呼吸は喘息患者さんにとって重要なスキルです。

正しい腹式呼吸を身につけることによって呼吸を効率化し、小さな発作の症状を和らげることができます。

<腹式呼吸の方法>
1. リラックスした姿勢をとる
2. 片手を胸に、もう片手をお腹に置く
3. 鼻からゆっくり息を吸い、お腹を膨らませる
4. 口をすぼめてゆっくり息を吐き、お腹をへこませる
5. 1分間に6〜8回程度のペースで繰り返す

腹式呼吸には多くの効果があります。

まず、呼吸の効率化酸素摂取量の増加により、体内により多くの酸素を取り込むことができます。

また、リラックス効果ストレス軽減にも役立ち、心身の緊張を和らげます。

さらに、気道の拡張と呼吸筋の強化にも役立ち、呼吸機能の向上につながります。

加えて、自己管理能力集中力の向上も期待でき、日常生活の質を高めることができます。

そして、睡眠の質の改善にも効果があり、より良い休息を得られる可能性があります。

腹式呼吸の練習方法としては、まず毎日5〜10分程度、定期的に練習することが大切です。

また、日常生活の中で意識的に行うことで、習慣化を促進できます。

さらに、スポーツの前後やストレスを感じたときに実践することで、より効果的に活用することができます。

これらの方法を組み合わせることで、腹式呼吸のスキルを着実に身につけ、その恩恵を最大限に受けることができるでしょう。

【参考文献】”Asthma and Exercise” by Allergy and Asthma Network
https://allergyasthmanetwork.org/what-is-asthma/asthma-exercise/

4. スポーツ中に発作が起きた場合


喘息の方がスポーツを楽しむうえで、最も懸念されるのが運動中の発作です。

適切な対処法を知っておくことで、万が一の事態にも冷静に対応することができます。ここでは、スポーツ中に喘息発作が起きた場合の対処方法についてご説明いたします。

スポーツ中に喘息発作が起きた場合の対処法は以下の通りです。

1. 運動を即時中止し、やや前かがみの姿勢をとります。
2. ゆっくりと深呼吸を行い、パニックにならないよう心がけます。
3. 処方された発作時の薬(短時間作用性β2刺激薬の吸入薬)を使用します。
4. 少量の水を飲み、気道の乾燥を防ぎます。
5. 発作の原因となる環境因子から離れ、できるだけリラックスします。
6. 発作開始からの時間を記録し、症状の経過を把握します。
7. 10〜15分で症状が改善しない場合は、緊急医療を求めます。
8. 周囲の方に状況を説明し、必要に応じて助けを求めます。
9. 症状が落ち着いた後も安静にし、その日の運動は控えます。

事前準備として、主治医と適切な対処法を確認し、発作時の薬を常に携帯することが大切です。

また、一緒にスポーツする仲間や指導者の方に喘息持ちであることを伝え、緊急連絡先を登録しておきましょう。

適切な準備と対策を行いながら積極的にスポーツを楽しむことで、喘息症状の改善や全体的な健康増進につながります。

◆「喘息発作が起きたときの対処法」>>

【参考文献】”Exercise-Induced Asthma” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/4174-exercise-induced-asthma

5. おわりに

喘息の患者さんにとって、スポーツは避けるべきものではなく、適切に行うことで症状改善や健康増進につながる可能性があります。

医師との相談を基にご自分に合ったスポーツを選び取り組むことが重要です。

準備運動を十分に行い、継続的に運動することで心肺機能が向上します。腹式呼吸の習得や発作時の対応準備も忘れないようにしましょう。

ご自分の体調を理解し、無理せず楽しみながら活動範囲を広げていくことが大切です。