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喘息は完治するのか?小児と成人の違い、治療と管理のポイント

喘息は、一度発症すると完全に治しきることが難しい病気です。

これは気道(空気の通り道)の慢性的な炎症が原因で、現代の医学ではこの炎症体質自体を根本から取り除く治療法がないためです。

そのため、喘息は症状をコントロールしながら付き合っていく疾患といえます。

この記事では、小児喘息と成人喘息の違いから、治療と管理のポイントまで解説していきます。

1.喘息と言われた…喘息は完治する?


「喘息」と診断されると、「この病気は治るのだろうか?」と不安になりますよね。

結論から言えば、現在の医療では喘息そのものを完全に治す(根治する)のは難しいとされています。

たとえ症状が一時的に落ち着いても、実は気道の炎症(いわば“ボヤ”のような状態)が残っており、治療をやめてしまうと再び発作や症状が出てきてしまうのです。

特に喘息は遺伝的な体質も関与しており、一度敏感になった気道の状態を完全に元通りにするのは難しいと考えられています。

◆「喘息と遺伝の関連性」>>

ただし、症状を上手に抑えていけば「寛解(かんかい)」といって、治療がなくても症状が現れない状態に至ることがあります。

これはいわば“治った”ように見える状態ですが、医学的には炎症体質が治ったわけではないため「完治」とは区別されます。

なお、2024年に改訂された最新の喘息予防・管理ガイドラインでは、「臨床的寛解(Clinical remission)」という概念が新たに示されています。

これは、症状や発作がなく肺機能も正常に保たれた高いレベルのコントロール状態を指し、疾患が完全に消失した「治癒」とは異なるものです 。

このような臨床的寛解に達した場合、医師の判断で治療薬を使わずに経過観察を目指せるケースもあります。

ただし、すべての患者さんがこの状態を達成できるわけではありません。

小児喘息(子どもの喘息)の場合、成長に伴って気道が強くなり思春期までに全体の6〜7割ほどが症状が出なくなるとも言われています。

実際、子どもの喘息患者さんの多くは大人になるころには症状が出なくなる(長期寛解する)ケースが多くみられます。

しかし、油断は禁物です。たとえ症状がなくなっていても、気道の過敏性(刺激に対する反応しやすさ)は残っているという報告もあります。

自己判断で治療を中断すると、また症状がぶり返したり悪化してしまう可能性があります。

症状が落ち着いていても主治医の指示のもと治療や管理を続けていくことが大切です。

【参考情報】『気管支ぜんそく』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html?utm_source=chatgpt.com

【参考情報】“Why Current Therapy Does Not Cure Asthma” by National Institutes of Health (PMC)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10488599/

2.成人喘息と小児喘息の違いとは?【子どもと大人の喘息の違い】


喘息は、年齢や体質によってその症状や治療方法が異なる場合があります。

特に成人喘息と小児喘息では、発症のタイミングや症状の現れ方が大きく違い、それに伴う治療法や管理方法も変わってきます。

この章では、成人と子どもにおける喘息の違いについて、発症年齢、症状、寛解の可能性を中心に説明します。

喘息を理解し、適切な治療法を選ぶために、まずは両者の違いを明確にしていきましょう。

子どもの喘息(小児喘息)と大人の喘息(成人喘息)では、その経過に違いがあります。

2-1.小児喘息とは

小児喘息は、成長につれて症状が軽くなり、思春期頃までに寛解するケースが多いことが特徴です。

気道の炎症も年齢とともに落ち着いていく場合があります。

実際に「子どもの頃はゼーゼーしていたけど、中学生くらいで発作が出なくなった」という方も珍しくありません。

幼児期~学童期に発症する喘息の多くはアレルギー体質が原因で、症状としては喘鳴(ぜんめい・ゼーゼーとした呼吸)や咳が多く、特に夜間や早朝に症状が現れることが特徴です。

ただし、女児(女の子)の喘息は思春期を過ぎても持ち越しやすいとの指摘もあり、個人差があります。

また小児喘息が一旦寛解しても、大人になってから再発するケースもあるので注意が必要です。

◆「小児喘息」について詳しく>>

【参考情報】『思春期の喘息患者さんへ』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/young.html

2-2.成人喘息とは

一方、成人喘息(大人になってから発症した喘息)は完治が難しく、慢性的に付き合う疾患とされています。

成人で発症する喘息は、子どもの頃からのアレルギー体質を引き継いでいる場合もあれば、社会人になってからハウスダストやダニ、花粉、ペット、人によってはタバコの煙や大気汚染などをきっかけに発症する場合もあります。

成人喘息は発症年齢が高いほど寛解しにくく、適切に管理しないと症状が悪化しやすい傾向があります。

また、繰り返す発作によって気道の組織が分厚く硬くなり(リモデリング)、元に戻りにくくなることも大人の喘息の特徴です。

その結果、大人の喘息は長期化・重症化しやすく、生涯にわたって治療と管理を続けていく必要があります。

成人喘息は基本的に治らない(完治しない)ものと考え、症状をコントロールしていくことが大切です。

ただこれは決してネガティブなものではなく、きちんとコントロールしていくことで、通常の方と変わらない生活が送れるということでもあります。

また、一部の成人喘息患者さんでは、適切な治療を続けることで症状がほとんど出ない臨床的寛解の状態に至り、医師の判断で薬を減らしたり中止できる可能性も指摘されています。

とはいえ、成人喘息でこのようなケースは決して多くなく、大半の患者さんは生涯にわたって管理が必要となるのが現状です。

【参考情報】“The Medical Minute: Asthma differences in adults and children” by Penn State Health
https://www.psu.edu/news/impact/story/medical-minute-asthma-differences-adults-and-children

3.喘息治療でやるべきこと【喘息の治療法と管理方法】


喘息の治療は、大きく分けて「薬物による治療」と「生活環境の調整・自己管理」の二本柱で進めていきます。

喘息は前述の通り、適切な治療を継続することが重要です。

ここでは、喘息と診断されたらどのような治療や対策を行っていく必要があるのかを説明していきます。

3-1.長期的な治療

喘息の治療では、症状があるときだけ対処するのではなく、症状がないときでも毎日薬を使って炎症を抑える「長期管理治療」を行うことが基本です。

気道の慢性的な炎症は症状の有無に関わらず続いており、これを放置するとまた発作が起きてしまいます。

そのため、「今は咳も出ないし苦しくないから治ったかな?」と思っても、勝手に薬を中断しないことが重要です。

医師から指示された毎日の吸入薬や内服薬をきちんと継続することで、気道の炎症を鎮め、発作が起こりにくい状態を保ちます。

喘息の長期治療で中心となる薬は吸入ステロイド薬です。

代表的な薬には、フルタイド、アドエア、シムビコート等があり、これらは気道の炎症を抑える役割を果たします。

ステロイドというと強い薬のイメージがありますが、吸入薬は気道に直接働き少量で効果を発揮できるため、全身への副作用も少なく安全に使用が可能です。

この薬を継続して毎日使用することで気道の過敏性を抑え、発作を予防します。

その他、症状や年齢に応じて気管支拡張薬(気道を拡げる薬)やロイコトリエン拮抗薬(シングレア、アレグラなど)抗体製剤(ゾレア・ヌーカラなど)が組み合わされることもあります。

発作が起きてしまった際には、救急薬(発作治療薬)として短時間作用型β2刺激薬(サルブタモールやメプチン)という吸入薬を使用する場合があります。

これは気道を急速に拡げて症状を和らげる薬ですが、あくまで一時的に楽にする対症療法です。

発作治療薬に頼りすぎず、日頃から長期管理薬で発作を起こさないようにすることが喘息治療のポイントになります。

これらの薬剤は、個々の患者さんの状態に応じて医師が選択し、組み合わせて使用されますので、個人で判断せず専門医の指導のもとで行うことが重要です。

◆「喘息の治療で使われる『吸入薬』について>>

◆「喘息治療で使われる『フルタイド』の特徴や副作用について解説!」>>

◆「喘息治療薬「アドエア」の特徴と使用時の注意点>>

◆「喘息やCOPD治療で使われる「シムビコート」の特徴や副作用について解説!」>>

【参考情報】『ぜん息』国立生育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/asthma.html

3-2.毎日の自己管理【生活環境の整備とセルフケア】

喘息と上手に付き合うためには、生活面での自己管理も欠かせません

薬だけに頼るのではなく、発作を誘発する要因をできるだけ減らす工夫をすることで、症状の安定が期待できます。

以下に、喘息の方が日常生活で気をつけるべきポイントを挙げます。

・アレルゲン・ホコリを避ける:
ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛やフケ、カビなどが喘息発作の誘因となります。

こまめな掃除や換気、寝具の洗濯・乾燥を行い、室内を清潔に保ちましょう。

ぬいぐるみやカーペットはダニの温床になりやすいので注意が必要です。

またペットのいるご家庭では、できれば別室で飼育するか、喘息の症状がひどい場合は飼育を控えることも検討してください。

◆「喘息の引き金となるカビ、掃除で注意すべきポイントについて」>>

◆「咳が出るのは猫アレルギーが原因?症状、治療、対処法について」>>

・タバコの煙を避ける:
喫煙者の方は禁煙が必須です。

タバコの煙は非常に強い刺激物で、喘息発作を悪化させる有害物質を含みます。

ご家族に喘息の方がいる場合も受動喫煙にさらさないよう、家庭内は完全禁煙にしましょう。

喫煙習慣のある方は、この機会に禁煙に取り組むことが大切です。

◆「タバコで咳がでる理由。長引くときは?」>>

・風邪や呼吸器感染症の予防:
ウイルス感染は喘息発作の主要な誘因です。

秋冬の流行時期にはインフルエンザや風邪をひかないよう手洗い・うがいの励行やマスク着用、人混みを避けるなどの対策をしましょう。

必要に応じてインフルエンザワクチンなどの予防接種も有効です。

また日頃からバランスの良い食事と十分な睡眠・休養をとって体調管理に努め、免疫力を高めておくことも大切です。

◆「有効なマスクの選び方と使い方」>>

・急激な温度変化に注意:
寒い冬の朝に冷たい空気をいきなり吸い込むと気道が刺激され発作が起きやすくなります。

冬場はマフラーやマスクで冷たい空気の直撃を避ける、室内では急な温度低下が起こらないようエアコンの調整や加湿を工夫する、といった対策を取りましょう。

また季節の変わり目や台風接近時など気圧・気温変化の大きい日は体調を崩しやすいので天気予報をチェックして早めに対策をしておくと安心です。

◆「喘息の人が気を付けたいエアコンの使用方法>>

・適度な運動とストレス管理:
運動は心肺機能を高め、喘息の改善につながることもありますが、激しい運動は発作のきっかけになることがあります。

調子の良いときに医師と相談しつつ無理のない範囲で運動するのは良いでしょう。

またストレスや過労も喘息を悪化させることがあります。

規則正しい生活を心がけ、ストレスを溜めすぎないようリラックスする時間を作ることも重要です。

◆「喘息の方でもスポーツはできる?おすすめのスポーツと注意点について解説」>>

以上のように、薬物療法と生活環境を整えること、2つの両輪で喘息と向き合うことが大切です。

ご自身の喘息の誘因(アレルゲンや悪化要因)は人によって異なりますので、主治医と相談しながら「自分の場合は何に気をつければいいか」を把握して対策していきましょう。

日々の小さな心がけの積み重ねが、発作予防と症状安定につながります

【参考情報】『ぜん息の治療と管理のポイント』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/asthma.html

【参考情報】“Asthma – Treatment and Action Plan” by National Heart, Lung, and Blood Institute, NIH (.gov)
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma/treatment-action-plan

4.段階的治療とステップダウン


喘息治療は「適切にコントロールされた状態」を維持し、必要最小限の薬物で症状を抑えることを目標とします。

多くの患者さんが疑問に思う「いつまで治療を続けるのか」「薬は減らせるのか」について解説します。

4-1.治療の段階的調整(ステップダウン療法)

喘息治療では症状の重症度に応じて「治療ステップ」が設定されており、症状の改善に伴って段階的に薬を減らしていくことが可能です。

ステップダウンの条件:
・コントロール良好な状態が3~6か月以上継続
・日中・夜間ともに喘息症状がない
・発作治療薬の使用がない
・呼吸機能が正常範囲内(予測値の80%以上)

ただし、ステップダウンは必ず医師の指導のもとで行い、患者さんが自己判断で薬を減らすのは危険です。

4-2.治療効果が上がらない場合の見直しポイント

治療を継続していても改善しない場合、以下を確認することが重要です:

・薬の使用方法:吸入薬を正しく使用できているか
・治療継続性:指示通りに毎日服薬できているか
・環境要因:アレルゲンや悪化要因の除去ができているか
・合併症の有無:副鼻腔炎、逆流性食道炎などの治療が必要か

これらを見直しても改善しない場合に、治療のステップアップ(薬の増量・追加)を検討します。

4-3.長期管理における患者さんの役割

喘息の長期管理では、患者さん自身の積極的な参加が不可欠です:

日常的なセルフモニタリング:
・ピークフロー値の測定と記録
・喘息日記の作成(症状、使用薬剤、誘因の記録)

定期受診での医師との情報共有:
・症状の詳細な報告
・薬の使用状況や副作用の相談

喘息治療で最も大切なのは「症状がない時こそ、適切な治療を継続する」ことです。

現在では優れた治療薬が開発されており、適切な治療継続により健康な人と変わらない生活を送ることが可能です。

焦らず、医師と協力して段階的な治療調整を目指しましょう。

◆「喘息の治療、ゴールは?」>>

【参考文献】“Asthma cannot be cured, but symptoms can be prevented and controlled” by State of Michigan
https://www.michigan.gov/mdhhs/keep-mi-healthy/chronicdiseases/asthma

5.まとめ

喘息は現在の医学では完治が難しい病気ですが、適切な治療と日々の自己管理を行うことで、発作を予防し、通常の生活を送ることが可能です。

重要なのは、症状がなくても薬を中断せずに続け、生活環境を整えることです。

また、医師と協力して治療を進め、定期的に症状を確認しながら最適な治療法を維持していくことが、喘息患者さんの健康的な生活を支える鍵となります。

日々の努力によって、喘息はコントロール可能ですので、焦らず、しっかりとした管理を続けていきましょう。