カラオケ中に咳が出る理由と予防法、注意したい病気について
カラオケで楽しく歌っている最中に、突然咳が出て困ったことはありませんか?
せっかくの楽しい時間が咳で途切れてしまうと、気分が少し落ちてしまいますよね。
実は、カラオケ中に咳が出るのにはいくつか理由があります。
のどに負担がかかる歌い方や、乾燥した空気が咳を引き起こしやすくするのです。
さらに、カラオケ後も咳が続くようであれば、呼吸器に関わる病気が隠れている可能性もあります。
この記事では、カラオケ中に咳が出る原因や予防法、注意すべき病気についてご説明します。
咳に悩まされず、安心してカラオケを楽しみましょう。
1.カラオケの最中に咳が出る理由とは
カラオケを楽しんでいる最中に、急に咳が出てしまうと歌いづらくなってしまいます。
思い切り歌いたいのに、咳で中断されてしまうとがっかりした気分になるでしょう。
ここからは、カラオケ中に咳が出てしまう主な理由についてご紹介します。
<のどへの負担>
カラオケでは普段の会話とは違い、大きな声を出して歌います。
これにより、のどに必要以上の緊張や圧力がかかり、のどの声道が狭まってしまうことがあります。
のどに負担がかかりすぎると、声帯が炎症を起こしたり、のどが緊張して咳が出やすくなったりします。
とくに、高音を無理に出したり、声を張り上げて歌ったりすると、のどに大きなダメージを与えることがあります。
<気管支の過敏性>
カラオケで歌うと、声帯やのどだけでなく、気管支が刺激されることもあります。
とくに、もともと気管支が敏感な方や、気管支炎、喘息などの持病をお持ちの方は注意が必要です。
歌うことで呼吸が普段より深くなり、気管支への刺激が増えるため、気道が反応して咳を誘発します。
【参考情報】”Vocal Hygiene” by Centre of Excellence in Severe Athma
https://www.severeasthma.org.au/vocal-hygiene/
<声帯の疲労>
長時間続けて歌い続けることで、声帯も疲労します。
歌っているときには、普段よりも強い息を使って声を出すことが理由です。
声帯は、声を出すために絶えず動いていますが、酷使しすぎると声帯に炎症が起こり、のどが腫れたり痛みを感じることがあります。
これが、咳が出る原因です。
<空気の乾燥>
カラオケボックスの空調は、室内の温度調整をするために強めに設定されていることが多く、部屋の空気が乾燥しがちです。
乾燥した状態で声を張り上げると、のどが傷つきやすく、咳を引き起こしやすくなります。
<カラオケが原因以外の健康問題>
逆流性食道炎や慢性気管支炎など、もともと呼吸器や消化器に問題がある場合、カラオケで歌うことで咳の症状を引き起こしやすくなります。
たとえば、逆流性食道炎では胃酸が逆流し、のどや気管を刺激して咳を誘発することがあります。
慢性気管支炎や気管支拡張症がある方も、歌うことで気道に負担がかかり、咳が出やすくなります。
2.カラオケ中の咳の予防方法
カラオケを楽しむ際に咳が出てしまうのを避けたいものですよね。
ここからは、のどにやさしい歌い方や、簡単にできる咳を防ぐための対策をご紹介しましょう。
2-1.のどへの負担がかかりにくいように歌う
まず、のどに負担がかからない歌い方を心がけることが大切です。
無理に大きな声を出すのではなく、自然な呼吸と声量で歌うことを意識しましょう。
高音部分や低音部分を無理に歌うと、のどが酷使されてしまいます。
自分の声の範囲に合った曲を選ぶことで、のどへの負担を減らすことが可能です。
また、声を出す際には、腹式呼吸を使うとよいでしょう。
腹式呼吸は、息を吐くときにお腹の力を使い、声を出す方法です。
腹式呼吸を使うことで、のどにかかる負担を減らし、自然な声量で歌うことができます。
2-2.のどを乾燥させない
次に、のどの乾燥を防ぐことが重要です。
カラオケの部屋は冷暖房が効いており空気が乾燥している環境が多いです。
乾燥を防ぐためには、こまめな水分補給を心がけましょう。
水分を定期的に摂ることで、のどの粘膜が潤い、乾燥による咳を防ぐことができます。
もし、水分補給だけでは足りない場合は、飴をなめることも効果的です。
のど飴やハチミツ入りの飴は、のどを潤すだけでなく、粘膜を保護する作用もあるので、咳予防に役立ちます。
2-3.刺激のあるものの飲食をしない
咳予防のために、カラオケ中に刺激の強い飲食物を控えましょう。
のどに刺激を与え咳を誘発しやすいものは、辛い食べ物や炭酸飲料、アルコール、冷たい飲み物などです。
冷たすぎるものも、のどを急激に冷やすことで粘膜に影響をあたえ、結果的に咳の原因となります。
カラオケを楽しむ際には、こららの代わりに常温の水やのどにやさしい温かい飲み物を選ぶのがいいでしょう。
のどへの負担を減らし、咳を防ぎやすくなります。
2-4.のどを適度に休ませる
のどを適度に休ませることも大切です。
長時間の間ずっと歌い続けると、どうしてものどに負担がかかってしまいます。
そのため、のどが疲れたと感じるまで無理に歌い続けないようにしましょう。
休憩を挟みながら歌うことで、のどをリラックスさせ、過度な負担を避けることができます。
たとえば、2〜3曲歌ったら一度休憩を取り、のどを潤すようにするとよいでしょう。
2-5.のどが不調の時は歌わない
のどが不調のときや風邪を引いたあと、アルコールを飲んだりたばこを吸ったりしたあとは、のどが非常にデリケートな状態になっています。
このような状態で無理に歌うと、のどにさらなる負担がかかり、咳が出やすくなるだけでなく、のどの回復が遅れてしまうこともあります。
たとえば、風邪のあとでのどが腫れているときは、少しの刺激でも咳を引き起こしやすく、炎症が悪化するリスクがあります。
アルコールやたばこはのどの粘膜を乾燥させたり刺激したりするため、すぐにのどが疲れてしまい、結果として咳が止まらなくなることも少なくありません。
のどが完全に回復していない状態では、無理に歌わずにしっかりと休ませることが大切です。
たとえカラオケを楽しみにしていたとしても、体調を優先し、のどが健康な状態で歌いましょう。
【参考文献】”Maintaining Vocal Health” by University of Michigan Health
https://www.uofmhealth.org/conditions-treatments/ear-nose-throat/maintaining-vocal-health
3.カラオケ後も咳が続く時に考えられる病気
カラオケのあとに、もし咳が続くようであれば、何らかの病気が原因である可能性があります。
ここからは、考えられる代表的な呼吸器疾患をご紹介しましょう。
3-1.咳喘息
咳喘息は、気管支が慢性的に炎症を起こし、長期間にわたって咳が続く病気です。
喘息とは異なり、ゼーゼーという喘鳴(ぜんめい:呼吸時の音)はほとんどなく、咳だけが主な症状として現れます。
とくに夜間や朝方に咳がひどくなることが多く、夜中に目が覚めたり、寝つきが悪くなることで生活の質が低下することもあります。
咳喘息は、カラオケなどでのどに負担をかけたあとに悪化することがあります。
カラオケでの声の酷使が原因となり、咳喘息が発症する可能性も否定できません。
放置すると通常の喘息に進行するリスクがあるため、長引く咳を軽視しないようにしましょう。
咳喘息の治療は、気管支の炎症を抑えることが目的となります。
治療には通常、吸入ステロイド薬が使用され、これにより気道の炎症を抑え、咳を緩和します。
また、症状が急激に悪化した場合には、気管支拡張薬を併用することもあります。
気管支拡張薬は発作的に咳がひどくなったときに気道を広げ、呼吸を楽にする効果が期待できます。
【参考文献】”Asthma Cough” by American College of Allergy Asthma and Immunology
https://acaai.org/asthma/symptoms/asthma-cough/
3-2.喘息
喘息は、気道が炎症を起こして狭くなり、呼吸がしにくくなる慢性的な病気です。
主な症状としては、咳や呼吸困難、胸の圧迫感、喘鳴(ぜーぜーという音)などがみられます。
とくに夜間や早朝にこれらの症状が悪化することが多いのが特徴です。
カラオケのあとにこれらの症状が現れたり、悪化したりする場合があります。
喘息は、気道が一時的に狭くなる「発作」を引き起こし呼吸が急激に苦しくなることがあります。
このため、もしカラオケ後に咳が続いたり、呼吸が苦しいと感じる場合は、注意が必要です。
治療は、発作を予防し、日常生活に支障をきたさないように症状をコントロールすることが目的です。
治療法として、気道の炎症を抑えるための吸入ステロイド薬を使用します。
毎日継続することで気道の炎症を抑え、発作を防ぐ効果が期待できます。
また、気道を広げて呼吸を楽にするためのβ2刺激薬も使われることがあります。
発作が起きたときや、息苦しいときに使用することで、一時的に気道を広げ呼吸を助けます。
重度の喘息の場合は、内服薬や、免疫療法が併用されることもあります。
アレルギーが関与している喘息の場合は、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を避けることによって症状の改善を試みます。
治療において最も重要なのは、医師の指示に従って定期的に薬を使用することです。
発作がない時でも、予防薬を使用し続けることで、喘息の症状を安定させることができます。
また、喘息の発作を引き起こすトリガー(カラオケでの声の酷使、アレルゲン、ストレスなど)を避けることも大切です。
【参考文献】”Asthma” by World Health Organization
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/asthma#:~:text=Asthma%20is%20a%20chronic%20lung,of%20breath%20and%20chest%20tightness.
3-3.肺結核
肺結核は、結核菌という細菌によって引き起こされる感染症です。
昔は治りにくい病気として恐れられていましたが、現在では効果的な治療法が確立され、適切に治療を受けることで治癒することが可能です。
とはいえ、肺結核は早期発見と適切な治療が非常に重要です。
結核菌は主に飛沫感染によって広がります。
感染者が咳やくしゃみをしたときに空気中に放出された結核菌を吸い込むことで感染しますが、感染してもすぐに発病するわけではありません。
結核菌に感染した方のうち、発病するのは10〜20%ほどです。免疫力が低下している場合や、体力が落ちているときに発病のリスクが高まります。
肺結核の症状は、ほかの呼吸器疾患や風邪と似ているため、初期には見過ごされがちです。
しかし、2週間以上続く咳やたん、発熱、倦怠感、体重の減少、寝汗などの症状が見られる場合は、注意が必要です。
これらの症状が長期間続く場合、単なる風邪や他の病気ではなく、結核の可能性も考えられます。
とくに血痰が出る場合は、結核のサインである可能性があります。
カラオケのあとに咳が続く場合でも、このような症状があるときは、すぐに病院の受診を検討しましょう。
早期に診断されれば、抗結核薬による治療が可能です。
治療には一定の期間、薬を継続して服用する必要がありますが、医師の指示に従い適切な治療を続けることで治癒します。
【参照文献】『呼吸器の病気』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/
【参考文献】”Pulmonary tuberculosis” by MedlinePlus
https://medlineplus.gov/ency/article/000077.htm#:~:text=Pulmonary%20TB%20is%20caused%20by,infection%20is%20called%20primary%20TB.
4.カラオケ後も続く咳、病院に行くべき?
カラオケのあとに咳が長く続く場合や、咳がひどくなってきたと感じる場合、病院に行くべきか悩むこともあるかもしれません。
咳が一時的なものだと考え放置してしまうこともありますが、以下のような場合は早めに呼吸器内科への受診を検討しましょう。
●咳が2週間以上続く
カラオケで一時的にのどが荒れて咳が出ることはありますが、通常は数日でおさまることが一般的です。
一方で、2週間以上咳が続く場合は、呼吸器に何らかの炎症や病気がある可能性があります。
とくに、夜間や朝方に咳がひどくなる場合や、日常生活に支障をきたすほどの咳が続く場合は、早めの診察が必要です。
● 呼吸が苦しい、または胸が痛い
咳とともに呼吸が苦しくなったり、胸に圧迫感や痛みを感じる場合は、喘息や肺炎などの可能性があります。
これらの症状がある場合は、自己判断は避けましょう。喘息や肺炎は放置すると、症状が急速に悪化する可能性があるため、早期の治療が必要です。
● 血痰が出る
咳をしている最中に血の混じった痰が出た場合は、肺や気道に何らかの異常がある可能性があります。
血痰は肺結核や気管支の炎症、さらには肺がんなどの重篤な病気のサインかもしれません。
上記のような場合は、咳の原因が単にカラオケで声を酷使した結果だけだとは限りません。
呼吸器の疾患が隠れている可能性があり、早期に呼吸器内科への受診が必要です。
ここからは呼吸器内科とはどのような科かについて、ご紹介しましょう。
【参考文献】”What is coughing up blood (hemoptysis)?” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/17696-coughing-up-blood
<呼吸器内科の特徴>
呼吸器内科は、呼吸に関わる器官、つまりのどや気管支、肺に関連する病気を専門的に診察する科です。
呼吸器専門の医師が診察を行い、一般的な内科では見逃されるような細かい呼吸器の異常や病気を見つけることができます。
カラオケ後に咳が長引いている場合、呼吸器内科で診察を受けることで、気管支喘息や咳喘息、さらには肺炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった疾患の可能性を調べることが可能です。
呼吸器内科では、まず気道や肺の状態を詳しく調べるため、呼吸機能検査や胸部X線、CT検査などが行われます。
これにより、咳が続いている原因を正確に特定することができ、適切な治療方針が立てられます。
咳の原因は多岐にわたるため、専門的な診断によってしか見つからない呼吸器疾患がある場合もあります。
◆「肺炎」について>>
◆「COPD」について>>
◆「呼吸器内科での検査」について>>
<呼吸器内科を受診するメリット>
呼吸器内科を受診することで得られる最大のメリットは、適切な診断とそれに基づく最適な治療を受けられることです。
呼吸器の専門医は、咳や息苦しさ、呼吸困難といった症状を多角的に評価し、最も効果的な治療をすることが可能です。
重大な呼吸器疾患が隠れている場合でも、早期に発見し治療を始めることができるため、症状の進行を防げるでしょう。
咳が続くと「たかが咳だから…」と思ってしまいがちですが、咳は呼吸器系の病気の初期症状であることも少なくありません。
咳が続く場合は、早めに呼吸器内科での診察を受け、適切な治療を受けることが健康を守るうえで非常に大切です。
【参照文献】『長引くせきの原因はなに?』独立環境保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/42/feature/feature02.html
5.おわりに
カラオケは楽しいリフレッシュの場ですが、歌い方や環境によっては、のどに大きな負担がかかり、咳を引き起こしてしまうことがあります。
無理に大きな声を出したり、乾燥した空気の中で長時間歌ったりすることは、のどへの負担が大きく咳の原因になるため控えましょう。
ただし、カラオケ後も咳が長引いたり、呼吸が苦しくなった場合は、単なる一時的な症状ではない可能性もあり気をつけるべきです。
ただの咳だと軽視せず、早めに呼吸器内科で診察を受けることで、重篤な病気の早期発見にもつながります。
楽しいカラオケを、健康的に楽しむためにも、のどにやさしい歌い方や適切なケアを心がけましょう。