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咳止め薬は市販薬で対応できる?咳のタイプ別・選び方と受診の目安

仕事や家事で忙しく、病院に行く時間がないときに限って咳が出始めることはありませんか?

とくに軽い咳であれば、「市販の咳止め薬で何とかしたい」と考える方も多いでしょう。

実際、市販薬でも咳を和らげることは可能ですが、咳のタイプに合わせた薬選びが重要です。

さらに、咳が長引いたり重症化する場合には早めに医療機関を受診する必要があります。

本記事では、乾いた咳・痰が絡む咳・アレルギーによる咳などタイプ別に効果的な市販薬の有効成分をご紹介します。

また、「この症状が出たら市販薬ではなく病院へ」という受診の目安についても解説します。

咳にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

1.乾いた咳(空咳)に効果的な市販薬


乾いた咳(乾性咳嗽〈がいそう〉)とは、痰が出ないコンコンとした空咳(からせき)のことです。

風邪の初期やマイコプラズマ肺炎などでは頑固な乾いた咳が続くことがあります。

こうした咳を和らげるには、中枢性鎮咳成分と呼ばれる「咳中枢」に作用する薬が有効です。

市販の咳止め薬によく含まれるデキストロメトルファン(非麻薬性鎮咳薬<ちんがいやく>)は咳中枢に作用してつらい咳をしずめてくれます。

比較的安全性が高く、眠気の副作用も少ないため痰の少ない乾いた咳に適した成分です。

一方、コデインやジヒドロコデインなどの麻薬性鎮咳成分は強力な咳止め効果がありますが、依存性や眠気・便秘などの副作用に注意が必要です。

日本では12歳未満の小児にはコデイン配合薬の使用は禁止されています。

大人が使用する場合も用法用量を守り、長期連用は避けましょう。

例えば、市販薬の一例として、ジヒドロコデインを主成分とする鎮咳薬では、咳中枢に作用して咳の発生をおさえる働きがあります。

市販薬を選ぶ際は、症状に合った成分が入っているか確認しましょう。

とくに喘息など持病で咳が出ている場合、市販薬だけでは咳が改善しにくいことがあります。

乾いた咳が長引くときは、早めに呼吸器内科を受診することを検討してください。

◆「マイコプラズマ肺炎の基本情報」>>

【参考文献】”Amending Over-the-Counter Monograph M012: Cold, Cough, Allergy, Bronchodilator, and Antiasthmatic Drug Products for Over-the-Counter Human Use
” by Federal Register
https://www.federalregister.gov/documents/2024/11/08/2024-25910/amending-over-the-counter-monograph-m012-cold-cough-allergy-bronchodilator-and-antiasthmatic-drug

2.痰が絡む咳に効果的な市販薬


痰が絡む湿った咳(湿性咳嗽)は、「ゴホゴホッ」という重たい咳音とともに粘液が出るのが特徴です。

気管支炎や肺炎などで見られる咳ですが、湿った咳は無理に止めない方がよいとも言われます。

咳は、気道に入った異物や病原体を体外に排出する防御反応であり、痰にはそれらを絡め取って出す役割があります。

強引に咳だけを止めてしまうと、かえって痰が出にくくなり症状が悪化する可能性があるため、痰の絡む咳には「痰を出しやすくする成分(去痰成分)」を含む市販薬を選ぶと良いでしょう。

具体的には、気道の粘液を調整して痰を出しやすくする成分が有効です。

市販薬では、カルボシステイン(L-カルボシステイン)やブロムヘキシン塩酸塩といった去痰成分を配合した製品があります。

例えば、「クールワン去たんソフトカプセル」という市販薬には、主成分としてカルボシステインが含まれ、痰の粘度を下げて排出しやすくする作用があります。

さらに、痰の排出をサポートするブロムヘキシン・気道粘膜の分泌を高めて痰を出しやすくするグアイフェネシンという成分を併用することで相乗効果で痰出しをサポートしています。

【参考情報】『クールワン去たんソフトカプセル』(杏林製薬株式会社)
https://www.coolone.jp/products/kyotan.html

痰が絡む咳向けの市販薬にも、少量の鎮咳成分が含まれているもの・咳と痰の両方に効く総合感冒薬タイプも市販されています。

中には、咳中枢に作用する成分と気管支拡張成分を組み合わせ、辛い咳と呼吸を楽にする効果を併せ持った薬もあります。

しかし、高熱が続く、黄色や血の混じった痰が出るといった場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

◆「血痰が出る原因は?心配な病気と呼吸器内科を受診する目安」>>

【参考文献】”Cold and Cough Medicines” by MedlinePlus (U.S. National Library of Medicine)
https://medlineplus.gov

3.アレルギー性の咳に効果的な市販薬


花粉症やハウスダストなど、アレルギーが原因で出る咳もあります。

アレルギー性の咳は、季節性の花粉症やダニ・ホコリによるアレルギー性鼻炎で生じることもがあります。

アレルギー反応による咳症状は、市販薬で一定程度緩和できる場合もありますが、根本的な治療には原因への対処が必要です。

アレルギー性の咳には、抗ヒスタミン成分や抗アレルギー成分の入った市販薬でアレルギー症状を抑える方法があります。

市販の総合感冒薬や咳止め薬には、クロルフェニラミンマレイン酸塩などの抗ヒスタミン薬が含まれているものがあり、この成分は、アレルギーによる咳やくしゃみを鎮める効果があり、鼻水・鼻づまりの改善にも役立ちます。

ただし、抗ヒスタミン薬は副作用として眠気が出る場合があるため、運転や作業前の服用には注意しましょう。

花粉症が原因の軽い咳であれば、市販の抗アレルギー薬(第二世代抗ヒスタミン薬など)を服用することでくしゃみ・鼻水とともに咳も改善するケースがあります。

ただし、咳が長引く場合は咳喘息や気管支喘息など喘息による咳症状の可能性も含まれており、その場合、市販薬のみでの改善は難しいでしょう。

気管支喘息では、気道の慢性的な炎症が背景にあり、吸入ステロイドなどによる長期的な治療が必要です。

市販の咳止め薬で一時的に咳を抑えても、根本の炎症が治まらなければ症状は繰り返します。

とくに「夜間や早朝に咳込む」「ゼーゼーと喘鳴(ぜんめい)がする」ような場合は喘息の疑いがあり、早めに呼吸器内科を受診した方がよいでしょう。

◆「喘息」について詳しく>>

◆「咳喘息」について詳しく>>

◆「アレルギー性の咳は市販薬を使用していいの?>>

〖参考情報〗『アレルギーが原因となる咳』東京都福祉保健局(ぜん息等予防啓発リーフレット)
https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/pri16.pdf

【参考文献】”Manage Common Cold” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov

4.市販の咳止め薬を使用する際の注意点


市販の咳止め薬は、病院に行かず手軽に入手できる反面、使用方法を誤ると副作用や症状の悪化を招くことがあります。

特に、咳の種類や体調、併用薬によっては注意が必要です。

ここでは、市販薬を安全に、そして効果的に使うためのポイントをご紹介します。

4-1.薬の選び方と使用方法

・咳の種類の確認
乾いた咳・湿った咳・アレルギーによる咳、咳の種類に応じて適切な成分を含む薬を選択することが大切です。

処方薬と違い、市販薬には必要のない成分まで含まれていることがあります。

ドラッグストアで購入する際には、薬剤師や登録販売者に相談し、自分の症状に合う薬を選んでもらうとよいでしょう。

◆「咳が出る時の市販薬の使用について」>>

・成分と用法・用量の確認方法
購入した市販薬のパッケージや添付文書をよく読み、有効成分や服用方法、副作用を確認してください。

とくに総合感冒薬や他の市販薬を併用する場合、成分の重複に注意が必要です。

同じ鎮咳成分を含む薬を重複して服用すると、過剰摂取による眠気・めまい・血圧上昇など副作用のリスクが高まります。

実際、総合感冒薬には咳止め成分(デキストロメトルファンなど)が含まれることが多いため、咳止め薬と一緒に飲むと成分が重複してしまう可能性があります。

4-2.特別な注意が必要な場合

・持病がある方、妊娠中・授乳中の方
高血圧・糖尿病・心臓病など持病がある方や、妊娠中・授乳中の方は自己判断で市販薬を使わず、事前に医師や薬剤師に相談してください。

市販の咳止め薬には、交感神経刺激作用を持つ成分(例:メチルエフェドリン)や抗ヒスタミン剤が含まれることがあり、持病を悪化させたり胎児・乳児へ影響を及ぼす可能性があります。

◆「糖尿病」の基本情報>>

・お子様が使用する場合
小さなお子様がいる家庭では、大人用の咳止めを絶対に子どもに使用しないでください。

2013年頃から、欧米を中心にコデインが小児において重篤な副作用(呼吸抑制)を起こす可能性があるとして、使用制限の動きが始まりました。

これを受けて日本でも、2017年6月に厚生労働省により、12歳未満へのコデイン含有薬の使用制限が通知されました。

お子様の安全を考えると、年齢に合わせた薬を用いることが1番大切です。

市販薬でも、飲みやすいシロップや錠剤、粉薬など様々な物が販売されています。

パッケージにキャラクターが印刷された商品もたくさんありますので、お子様が飲みやすい商品を選択するのが良いでしょう。

【参考情報】「コデインリン酸塩等の小児等への使用制限について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000171434.pdf?utm_source=chatgpt.com

【参考情報】一般用医薬品等(OTC医薬品)の在り方について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001206970.pdf?utm_source=chatgpt.com

4-3.副作用について

咳止め薬に共通する副作用として、眠気、めまい、口の渇き、便秘などがあります。

とくに中枢性鎮咳薬を服用した後は、自動車の運転や機械操作は控えましょう。

複数の咳対策を併用しないことも安全に使用するポイントです。

上記の注意事項を守り、市販薬は正しく活用していきましょう。

少しでも不安や疑問があれば、購入前に遠慮なく薬剤師に相談することが大切です。

【参考文献】”Key Information About Cough and Cold Nonprescription (OTC) Drugs” by U.S. Food and Drug Administration
https://www.fda.gov/drugs/understanding-over-counter-medicines/key-information-about-nonprescription-over-counter-otc-oral-phenylephrine

5.受診すべきタイミング


軽い咳であれば市販薬で様子を見るのも一つの方法ですが、次のような症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。

5-1.市販薬では対処困難な症状

・長引く咳
目安として2~3週間以上、咳や痰の症状が続く場合。

風邪にしては長引きすぎていると感じたら、結核など感染症の可能性もあるため注意が必要です。

・市販薬を数日~1週間試しても改善しない場合
適切な市販薬を服用しても咳が全く良くならない場合は、別の原因疾患が隠れているかもしれません。

また、市販薬が症状に適していないことも考えられます。

◆「長引く咳で疑われる疾患について」>>

5-2.緊急性の高い危険な症状があるとき

・呼吸が苦しい、ゼーゼーと喘鳴がある:咳込んで息切れしたり、ヒューヒュー・ゼーゼーと音がする場合は気管支喘息や気管支炎の悪化が考えられます。
放置すると呼吸困難に陥る恐れがあります。

・咳をすると胸やわき腹が痛む:強い咳が続くことで肋骨や筋肉に負担がかかり、肋間神経痛やひび・骨折を起こすケースもあります。
また、肺炎が進行して胸膜炎を起こすと呼吸や咳で刺すような胸の痛みが生じます。
胸の痛みを伴う咳は要注意です。

・痰に血が混じっている:血痰(ピンク色~赤色の痰)が出る場合は、肺炎や結核、肺がんなど重大な疾患のサインです。
少量でも血液が確認できたら、速やかに呼吸器科を受診しましょう。

・高熱や悪寒を伴う、全身の倦怠感が強い:通常の風邪なら高熱は長く続きません。
38℃以上の発熱が数日経っても下がらない、寒気を伴う震えがある、ぐったりして食事が取れないほどだるい、といった場合はインフルエンザや肺炎の可能性があります。

以上のような症状が見られる場合、「様子を見よう」と市販薬だけで対処するのは危険です。

とくに呼吸が苦しい・息がゼーゼーする・高熱が続くといった症状は緊急性が高いため、迷わず呼吸器内科など専門科を受診しましょう。

受診の際には、いつからどのような咳が出ているか、痰の色や量、併発症状(発熱や胸痛など)を医師に伝えると診断の助けになります。

◆「気管支炎について」>>

◆「肺炎とは」>>

◆「胸膜炎とは」>>

◆「インフルエンザの基本情報」>>

〖参考情報〗『せきが長引く時は?(結核予防啓発)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/index.html#:~:text=%E7%B5%90%E6%A0%B8%20

【参考文献】”Over‑the‑Counter Monograph M012…” by U.S. Food and Drug Administration
https://dps-admin.fda.gov/omuf/sites/omuf/files/monograph-documents/2022-10/OTC%20Monograph_M012-Cough%20Cold%20Allergy%20Bronchodilator%20and%20Antiasthmatic%20Drug%20Products%20for%20OTC%20Human%20Use%2010.14.2022.pdf?utm_source=chatgpt.com

市販の咳止め薬は上手に使えば、つらい咳症状を一時的に和らげ日常生活の負担を軽減するのに役立ちます。

ただし、市販薬はあくまで対症療法であり、原因を治すものではないことを忘れないでください。

風邪による咳も、通常は1週間前後で自然に治まります。

長引く咳や激しい咳は風邪以外の疾患の可能性もあるため、様子を見ながらも適切なタイミングで医療機関を受診することが大切です。

とくに咳が2〜3週間以上続く場合や、息苦しさ・血痰などの異常を感じたら、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

忙しい毎日でも、自分の身体のサインを見逃さずケアすることが健康維持の鍵です。

市販薬と医療機関を上手に使い分け、つらい咳を早く鎮めて快適な生活を取り戻してくださいね。

◆「風邪の基本情報と病院を受診すべきタイミング」>>